諫早有喜 白髯神社 まれびと説と武内宿禰


白髯神社

〒854-0121  諫早市有喜町16

251号線で矢上から島原の小浜方向へ海沿いを行くと、ちょうど中間あたりに、有喜という町がある。

町名の由来はウキ(泥)で、有喜川流域の泥深い湿地にちなむとある。宇木・浮亀とも書くらしい。

この地は縄文中・後期の有喜貝塚をはじめ縄文・弥生時代の遺跡や石器・土器・骨角器などの散布地ともある。大昔からこの地には人が集っていた事がわかる。

白髯神社

白髯神社

白髯神社

白髯神社

 

白髯神社は海の近くで、海に流れ込んでいる有喜川の近くにある。大きな石の鳥居は立派で、境内に入れば広く、拝殿は由緒有りげだが新しいようだ。

鍋島藩主の手によって享保8年(1723)に建立されたとあり、昭和18年に建て替えられ、さらに平成12年に新たな神殿造営が行われたとある。新しさは、町中にあり、地域の人達に親しまれた証でもある。

白髯神社

白髯神社脇の大神宮の石碑

 

祭神は武内宿称(たけのうちすくね)

さて武内宿禰だが、5代の天皇に仕えたという超長生きの人物で、神功皇后の三韓征伐の話に必ず参謀として出てくる。

白髯神社の白鬚は、ヒゲモジャのことで、サルタヒコが祭神の場合もある。

調べてみたら、白鬚神社は全国に約190社あるといわれている。とくに静岡県に多く、61社、次に岐阜県の43社、埼玉県の20社と続く。主として太平洋岸に東北から九州まで鎮座するが、その根本社は、滋賀県高島市鵜川(うかわ)に鎮座する旧県社白鬚神社である。小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

 

なるほど。

白鬚神社の祭神たる白鬚明神は、その多くは猿田彦大神であるが、武内宿禰命である神社が30社あるという。少数ながら、少彦名命、天御中主神、太玉命、金山彦命、大己貴命、天鈿女命、大田命、久延毘古命ほか多彩な神々の名がみられる。

 

白鬚大明神は「比良神」とも言うとある。白髪頭でもじゃもじゃ髭の容貌だけではなさそうだ。

長崎の白髭神社は武内宿禰が多いかと思ったら、全国的には少数のようだ。

長崎の場合、神宮皇后伝説があるので、猿田彦ではなくて武内宿禰が神として祀られているのだろう。

この有喜の白鬚神社にも

大和朝廷初期の頃、神功皇后を補佐して朝鮮半島に出兵、凱旋の折、暴風雨に遭遇し、この有喜の地に漂着したそうで、船の修理ができるまで滞在し、この有喜の人たちに読み書きや医療、産業技術を教えてくれたといいます。
武内宿禰一行が都へ帰った後、有喜の人々は武内宿禰をしのび、武内宿禰がすんでいた場所に祠を建ていのったといいます。そして、武内宿禰が白髪、白髭だったので、白髭神社になったそうです。

という言い伝えが残っている。

この話を聞けば、大国主と少彦名の国造り伝説が混じっているのかなと思う。少彦名も白鬚神社に祀られている場合があるからだ。

誰かがやってきて助けてくれたという話なら、同じ橘湾に面している、田結の歳神社伝説がある。

田結の地名の由来については、歳神社伝説によれば,元亀元年の頃稲を刈り取ったその夜突然激しい暴風雨が襲来したが、何者かが竹で稲を結束して寄せ集めてあったため助かったので、村民はこれを神の恩恵とし、以後村名も田結となったという。

うーん。似ていると思う。

来訪神、まれびと伝説、漂流神伝説など、海から幸をもたらす神が流れ着いたという話は、日本には数多い。

つまり、神様は普段から地域にいるのではなく、どこかからやって来て、そしてどこかに去っていくもののようだ。

折口信夫 民俗学者
外部からの来訪者(異人、まれびと)に宿舎や食事を提供して歓待する風習は、各地で普遍的にみられる。その理由は経済的なものが含まれるが、この風習の根底に異人を異界からの神とする「まれびと信仰」が存在するといわれる。

 

慰霊碑

白髯神社 境内

白髯神社境内にある社

白髯神社境内に祀られている仏教関連

 

日本人の「おもてなし」の根底にあるものだろう。

有喜の白髭神社の武内宿禰もまれびとだと言える。長崎の橘湾沿岸には「まれびと伝説」が多くあり、海を介しての交流が盛んだったのが原因かもしれないと思う。

橘湾沿岸には縄文の遺跡も多く発見されている。縄文時代から海からの来訪者が、多くの幸を持ってきたのかも知れない。

来訪神伝説は、そんな太古の時代からの記憶の現れなんだろうと思う。

敷地内に大神宮の石碑、慰霊碑、名前のない拝殿、その祠の後ろには仏の石像と墓碑等がある。

境内は広いし、色んな行事がここで行われてきたのだろう。

神社の役割は、地域の交流の要となったことである。様々な神を受け入れる日本神道のゆるさ、いや懐の深さを感じる。

だからこそ、神社は長い時代を経ても存在できているのだと感じる。

白髯神社

 

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