現在一番売れているスマホとは

AIのイメージ画像

家電量販店のスマートフォン売り場に足を運ぶと、値札を見て思わず目を疑うことがある。

片や20万円を超える高級品が鎮座し、片や3万円台で買える実用機が並んでいる。電話とLINEができれば十分という人も多い道具に、なぜこれほどの価格差が生まれるのか。

リアリストの視点で見れば、その差は主に「頭脳の処理能力」と「カメラ性能」に集約される。

安いスマホは軽自動車のようなものだ。日常の街乗り、つまりネット検索やメッセージ、動画を見る程度なら何一つ困らない。しかし、高速道路でアクセルを踏み込むような重いゲームや動画編集をさせると、途端に息切れする。

特に残酷なほど差が出るのがカメラである。

高級スマホは大型のイメージセンサーや明るいレンズ、高性能な画像処理を組み合わせ、暗い場所でもできるだけ光を拾う。望遠専用カメラを搭載した機種なら、遠くの被写体にもかなり強い。

一方、安いスマホで夜景を撮るとノイズが目立ち、無理にズームすれば輪郭が崩れ、油絵のような写真になることもある。

「思い出をどこまできれいに残したいか」という人間の欲望に、メーカーは実に正確な値札を付けているわけである。

メーカーごとの「思想の違い」も面白い。

スマホ市場を代表するAppleのiPhoneとSamsungのGalaxyだが、写真作りの方向性には違いがある。

iPhoneは比較的自然な仕上がりを重視し、誰が撮っても大きく失敗しにくい。曇り空なら、それなりに曇り空らしく写る。

対するGalaxyは、鮮やかさや見栄えを積極的に演出する傾向がある。空を青く、料理を鮮やかに見せ、上位モデルでは強力な望遠性能も売り物にする。少々派手だと言われようが、「写真を見た瞬間のインパクト」を重視するサービス精神がある。

Samsung Galaxyスマホ

さらにディープな世界に目を向ければ、中国のXiaomi(シャオミ)がドイツの名門ライカと組み、もはや「電話機能の付いた高級カメラ」と呼びたくなるような端末まで送り出している。

Xiaomi 17T スマートフォン

大型センサーとライカ監修のカメラシステムが生み出す画質は、スマホとしては驚くほど本格的だ。その代わり、カメラ部分は大きく、本体もそれなりに存在感がある。ポケットに入れれば、「これは電話なのか、それとも撮影機材なのか」と考えたくなる。

ここで、「中国や韓国のメーカーはバッテリーが爆発しないのか」と心配する声も聞こえてきそうだ。

歴史を振り返れば、2016年にはSamsungのGalaxy Note 7でバッテリーの発火事故が相次ぎ、製品が回収され、航空機への持ち込みも禁止されるというスマホ史に残る大事件があった。

しかし、その痛烈な教訓もあり、大手メーカーはバッテリーの安全管理を重視している。現在、正規ルートで販売されている大手メーカー製品について、国籍だけを理由に過度な不安を抱く必要はないだろう。

 

「ギャラクシーノート7」の電源切って=サムスン

一方、シニア層に根強い「らくらくスマートフォン」には、少し違った問題がある。

「迷わない」を追求した大きな表示や独自の画面、手厚いサポートは、スマホ初心者にとって頼もしい味方である。

しかし、少しでもスマホを使いこなそうとすると、その親切設計が逆に足かせになることがある。

普通のAndroidスマホとは操作方法や画面構成が違うため、家族に聞いても、

「何これ、普通のスマホと違うから分からない」

と匙を投げられる。

初心者を迷わせないためのスマホが、詳しい人まで迷わせる。なかなか見事な逆転現象である。

電話とメールを中心に使うなら便利だが、ネット、写真、各種アプリなどを日常的に使いたいなら、一般的なスマホの文字やアイコンを大きく設定して使った方が、長い目では便利な場合も多い。

では、こうした百花繚乱のスマホ市場において、現在の日本で最も売れているのは何か。

標準的なiPhone

答えは、身も蓋もなく「iPhone」である。

しかも、多くの人が求めるのは、必ずしも最高性能・最高価格のProモデルではない。標準的なiPhoneが広く選ばれている。

カメラ性能だけを見れば、ライカと組んだ中国メーカーにも魅力的な機種がある。超望遠ならGalaxyの上位モデルも強い。それでも日本ではiPhoneの人気が根強い。

理由は案外単純である。

「周囲に使っている人が多い」
「分からなければ誰かに聞ける」
「ケースやアクセサリーがどこでも売っている」
「機種変更しても操作方法が大きく変わらない」
「中古でも比較的高く売れる」

つまり、多くの人にとってスマホ選びは、F1マシンの性能比較ではないのである。

カメラのセンサーサイズが何インチだとか、CPUのベンチマークが何点だとか、100倍ズームで月のクレーターがどう写るとか、そんなことを毎晩考えながら眠りにつく人は少ない。

マニアが「最高性能」を追い求める横で、大多数の消費者は「無難さ」「安心感」「使いやすさ」「リセールバリュー」という、極めて現実的な基準で選んでいる。

現在、日本でiPhoneが強い理由もそこにある。

最先端技術だけで勝負が決まっているのではない。

「みんなが使っているから安心」という日本的な同調性と、「長く使えて、最後には高く売れる方が得」という実利主義。

その二つが見事に合流したところに、iPhoneがいる。

結局、一番売れるスマホとは、一番高性能なスマホではない。

多くの人にとって「買ってから後悔する可能性が一番低いスマホ」なのである。

 

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