女性ばかりの土蜘蛛の謎

土蜘蛛(つちぐも)って知っていますか?

大昔、九州の長崎、佐賀に住んでいた人々を、ヤマトがこう呼んでいた。

まさに化け物だ。 ヤマトに従わなかった人々をこう呼んでいた。「ゴキブリ」「ハイエナ」のような奴だ。 そんな言い方である。

土蜘蛛

土蜘蛛

まあ、よくある話しである。

大東亜戦争当時、日本人はアメリカ人を「鬼畜」と呼んでいた。「鬼畜米英」である。

戦況が悪化し、日本国土で空爆が始まった時、日本人は本土決戦を覚悟し始める。

アメリカ人が日本に攻めてきて、男は殺され、女は犯される。

日本人の殆どはそう信じていたのだ。

そしてアメリカ人から見れば、日本は野蛮人である。「ジャップ」と呼び、日本空襲には手加減など一切なかった。原子爆弾投下はその最たるものである。

戦争相手にあだ名をつけると、人間は敵を人だと思わなくなるようで、残酷さがエスカレートしていくのだ。

肥前の人間を土蜘蛛(つちぐも)と呼ぶことで、ヤマト勢は良心の呵責無しで粛清出来たのだと推測される。

Anti-Japanese pins and postcards.

Anti-Japanese pins and postcards.

 

肥前風土記という本がある。

「肥前の国には土蜘蛛がおり、天皇の命令に従わなかったため、 景行天皇に退治された」とある。まあ、肥前の人間としては、言いたい事は沢山あるが、まあ置いとくとする。

今回何を書きたいかというと、その土蜘蛛と呼ばれた地域に、女性の土蜘蛛が多く登場しているという事だ。

 

佐賀県の話がある。佐嘉川という川が流れており、その川上の大山田女・狭山田女が登場する。

昔、この里に土蜘蛛あり、名を海松橿姫(みるかしひめ)といひき。

天皇、国巡りしましし時、陪従、大屋田子をやりて、誅(つみな)ひ滅ぼさしめたまひき。

 

佐賀県多久(たく)市。景行天皇巡幸時、土蜘蛛八十女人が嬢子山の山頂にいた。

八十女人は「沢山の女性」という意味である。

 

長崎。この郡の速来の村に派遣して、土蜘蛛を捕らえさせた。

ここに、速来津姫(ハヤキツヒメ)という女性がいた。

 

長崎。 浮穴沫媛(ウキアナワヒメ)も記述にある。

どうだろうか。 これだけ女性が登場する。

 

そして彼女らは土蜘蛛の酋長である。

これらの土蜘蛛を退治した景行天皇は、四世紀に在位していたといわれている人物で、ヤマトタケルのパパだ。

実は景行天皇の存在は怪しく、この肥前風土記の記述もどこか作為があり怪しい。

しかし、女性の酋長が多くいたのは事実だ。    

土蜘蛛という現地の集団 そして、そのリーダーがほとんど女性。

肥前は女性の国だった。

そう言い切ってもいい。

そういえば邪馬台国の卑弥呼もしかり。魏志倭人伝には、邪馬台国以外に「女人国」というのがあった。

なぜ女性が酋長だったのか理由を考えたい。

 

一つには、その当時の集落のあり方が独特で、集落の結びつきが原始宗教だったと言われている。

そしてその宗教を管理するのが、巫女つまり女性だったというわけである。

それも一理ある。

巫女の卑弥呼が神事を司り、実際の統治は男子が行う二元政治(ヒメヒコ制)

九州にあったと言われる邪馬台国が、そのパターンなので、その政治形態が周辺国の肥前国に受け継がれていったという理由も成立する。

 

それなら日本中にこの女性酋長制度が広まっていてもいいと思うのだが、どうも肥前国だけのような感じである。

となれば、やはり邪馬台国の卑弥呼の影響が強かったのだろう。

つまり邪馬台国文化圏の中に肥前があったという事である。

 

魏志倭人伝に当時の倭人の風俗も記述されている。

その中で長崎ではないかと思われる箇所がある。

「真珠と青玉が産出する。倭の山には丹がある」という部分である。

真珠

青玉というのは翡翠だろう。これは大村湾でも取れるし、長崎の古代が載っている肥前風土記では、景行天皇が来た際、3種類の玉を献上し、そのため具足玉(そないだま)の国だと書かれている。

山には丹という部分だが、丹は辰砂という硫化水銀からなる赤色の鉱物かも知れないし、仙丹と呼ばれる霊力のある薬かも知れない。

辰砂は、長崎県と佐賀県の「九州西部鉱床群」があり、とくに朱産地が密集しているエリアの一つである。

地域で言えば佐賀県多良岳から嬉野町、松浦市である。

九州西部鉱床群

これらの事を考えれば、肥前国は邪馬台国統治圏の中にあり、各地に邪馬台国に属する集落が多くあったのではないかと推測できる。

日本の古事記には、邪馬臺国の記載はないが、土蜘蛛族がそれに匹敵するのではないだろうか。

これが、肥前に女性酋長が多い理由の推論である。

 

女戦士

女戦士

女性ばかりの土蜘蛛の謎” に対して2件のコメントがあります。

  1. バサラ より:

    邪馬台国九州説の舞台、山門地区。
    こちらにも土蜘蛛征伐で神功皇后が討ったといわれる土蜘蛛・田油津媛があります。
    女王塚(大塚)という塚も残っています。
    この辺りは、古墳だらけです。
    佐賀県では與止日女(ヨドヒメ)を祭ってあるけっこう神社が多いのですが、この地区にも與止日女を祭っている神社があります。

    こちらのサイト参照
    http://jyashin.net/evilshrine/gods/tsuchigumo_shrine/tsuchigumo_trip_chikugo_0107.html

  2. artworks より:

    コメントありがとうございます。肥前が女性が首長の国が多いのには僕も強い関心があります。邪馬台国も女王ですし、大和の最高神アマテラスも女性です。土蜘蛛族も謎ですし、今後も調べていきたいと思います。

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