隠れキリシタンは縄文系
この説は崎谷満氏の「DNAでたどる日本人10万年の旅」という本文中に有る。
まず日本語は縄文人によって誕生したという。
それは日本人の中で、一番多いD2系統の遺伝子から推察される。
D系統は新石器時代の縄文系人集団に由来するというのが学会のコンセンサス(合意)だからである。
日本人の遺伝子
日本人の遺伝子は、C、D、N、O系統の4つのグループに分けられる。
その地域別の比率を見ると、数の多さとは別に日本列島に大きな偏りの有る分布が確認されている。
例えばアイヌ等の北の地域では、D2系統が多く、九州ではO2bが多いと有る。
ざっくり言えば、日本人は北方からやってきたD2系統とユーラシア大陸の長江あたりからやってきた南方系が入り混じっているという。
ここまではよく聞く説である。
だが気になった点は隠れキリシタンに言及していることだ。
長崎の重要性
西日本の長崎は特殊だという。
その理由は島だらけの地域で、弥生時代の特徴である水田稲作が広まらなかったからという。
確かに、長崎は平地が少なく、漁業が中心の地域だった。
遺伝子の調査は行っていないが、成人T細胞白血球ウィルスの分布で見ると、長崎県の壱岐対馬、五島列島は極めてHTLVキャリアが特別して多い。
北のアイヌの次なのだ。
つまり、HTLVキャリアが多いところは、縄文系先住集団が多い地域なのである。
また言語でも長崎弁は古い言語体系を温存している。
それは、最古の万葉集時代の上代奈良語に見られた古い特徴を温存しているという。
またそのことから、日本語の大本は長崎にあったかもという推論が述べられている。
まあ、西九州に最初の長江文化が伝わったと考えれば、別に突飛な話ではない。
そして長崎が縄文系だという話は隠れキリシタンに現れているという。
キリスト教伝来
ご存知フランシスコ・ザビエルが出てくる奴である。
九州長崎から広まっていたキリスト教は近畿地方にまで広がっている。
これはキリシタン大名の分布で見るとよく分かる。
秀吉、家康のキリスト教禁止政策で、キリシタンだった人たちは、改宗していくのだが、一部の人達が、世間から身を隠すようにキリスト教を信じ続ける。
これが隠れキリシタンである。
確かに長崎以外の隠れキリシタンの話は殆ど聞かない。
長崎の信徒たちは「潜伏キリシタン」と「隠れキリシタン」に分けられる。
学術的には禁教期に仏教徒などに見せかけてひそかにキリスト教を信仰した人々を「潜伏キリシタン」と呼び、明治に入り禁教が解けた後も信仰を続けた人々が「隠れキリシタン」とされる。
そして隠れキリシタンの信仰は、いつしかキリスト教から離れて、独自の信仰に変わっていく。
それは、西洋のキリスト教信者から見ると不思議なことかもしれない。だが強度の禁教だった歴史が、そうさせたと思うのだが、やはり教会から見れば異端に走ったと考えるのだろう。
其の事がはっきりわかったのが世界遺産の登録だった。
2018年、長崎・天草『潜伏キリシタン』がユネスコ世界遺産に登録された。
しかし隠れキリシタンは対象外になったのだ。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に属する12の構成資産には、「生月島」の名前はない。
カトリック系の研究機関に属する学識者たちで、生月島の信仰を「土俗宗教に変容したもので、キリスト教ではない」という評価を下されてきた。
其の内容を具体的に書けば、ポルトガル語と日本語が入り混じったオラショと呼ばれる祈りや、ちょんまげ姿の洗礼者ヨハネが神棚に祀られている。
これを教会はキリスト教とは認めなかったのである。
仏教、神道の日本人にすれば、隠れキリシタンは明らかにキリスト教と思えるのだが、そこが西洋と東洋の違いなのかもしれない。
縄文の姿
崎谷満氏の著作の中では、この変貌していくキリスト教の中に、縄文の姿が見えるようである。
長崎の縄文時代の遺伝子による独自の思考によって、独自の信仰に変化し、禁教が解けても独自の信仰を守り抜いたこと。
これが縄文だと述べているのだ。
また、これらは、推測だけではなく、D2系統のDNAがアイヌと長崎に偏在する事で推論を述べているのだ。
新しい科学は推論を事実へ確定していく。
それはとても刺激的なことだ。
初めまして。北海道の「中村」です。
「縄文時代」「弥生時代」文化の違いを調べ、「竹村様」を知りました。
鋭いデータ分析に、敬意を表します。勝手ですが「竹村様」のご意見を参考にさせて頂きます。
私は「エゾ中村のブログ」で、<アイヌ文化関連>を掲載しています。
内容に間違いが、多々あると思っております。機会があれば、ご指導頂けると幸いです。
今後とも よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。古代は未だに謎が多く実証されていないことだらけですね。私も推論だけではなく、なるべく科学的根拠を大切にしたいと思っています。今後もよろしくおねがいします。