イランの歴史(4) 大小サタン対イラン
1979年のイラン・イスラム革命は、「宗教」を旗印にした革命が成功し、近代的な国家体制を樹立した。
これにより、西洋への従属から一線を画し、イランの独自路線への転換を図った。
革命前のイラン(パフラヴィー朝)は、アメリカ合衆国と非常に親密で、軍事・経済を西側に依存し、西洋化(服装・教育・文化)を強引に推進した王権だった。
これに対し、ルーホッラー・ホメイニーは反米路線をとり、西洋的価値観を批判した。
ちなみに、この時期のアメリカ大統領は民主党のジミー・カーターである。
そしてテヘランのアメリカ大使館が占拠され、外交官ら52人が人質となるイラン・アメリカ大使館人質事件が起こった。
これはカーター政権の大きな危機となった事件である。
カーターを一言でいえば、理想を掲げたが、1979年の国際危機に翻弄された大統領といえるだろう。
イラン・イスラム革命が中東に与えた影響
これは大事件といえる。
「宗教による革命」が現実になったからである。
そして中東全体に「体制転換のモデル」を示したのである。
さらに、シーア派の政治的覚醒を促した。
シーア派とは、指導者に預言者ムハンマドの血縁を求める考えである。
この点は、日本の天皇の在り方と似ているともいえる。
ただし、シーア派の考えと日本の天皇制との違いは、政治への関与の強さである。
日本では平安時代末期に武士団平家が台頭し、その後、武士による幕府が成立したことで、権威と権力の二重構造が形成された。
この点が大きく異なる。
イランでは宗教指導者が国家を統治する。
最高指導者は国家の最終決定権を持ち、軍・司法・放送などを統括する存在であり、当然、大統領よりも上位に位置する。
イラン・イラク戦争(1980~1988年)
当時のイラクはアメリカやソ連、アラブ諸国から支援を受けており、イランの革命は大きな問題だった。
革命で不安定なイランに、サッダーム・フセイン率いるイラク軍が侵攻する。
サッダーム・フセインは、イランとの長年の対立に加え、「今なら勝てる」と判断したのである。
当初はイラクが優勢だったが、イランが体制を立て直して反撃する。
そして戦争は泥沼化し、長期戦の末に双方とも疲弊した。
結果、国連の仲介で停戦となった。
短期決戦のはずが、8年に及ぶ消耗戦となり、両国とも深いダメージを負うことになったのである。
イスラエルと核開発
1979年のイラン・イスラム革命以前、イランとイスラエルは戦略的同盟関係にあったが、現在は敵対関係にある。
イランの核開発が「レッドライン」を超えたと判断したイスラエルが、核・軍事拠点への大規模な空爆を実施したとされている。
当時、エジプトやイラクなどのアラブ諸国では「アラブ民族主義」が台頭し、イスラエルとイラン(非アラブ国家)の双方にとって脅威となっていた。
そのため両国は協力関係を維持していたが、1979年のイラン革命によって状況は一変する。
ホメイニ師率いる革命政権は、イスラエルを「イスラムの土地を占領する不当な国家(小サタン)」と位置づけた。
冷戦が終結し、イラクという共通の敵が弱体化すると、両国の対立は表面化する。
イランはレバノンのヒズボラを本格的に支援し、イスラエルへの攻撃を間接的に後押しするようになった。
さらに2000年代以降、イランの核開発計画が国際的に問題視されるようになる。
不自然な国境線
イランはアメリカを「大サタン」、イスラエルを「小サタン」と呼び、現在に至っている。
中東の地図を見れば、不自然な国境線が多いことに気づく。
確かに砂漠地帯であるため、目印が少なく直線的になった面もある。
しかし大きな理由は、第一次世界大戦でオスマン帝国が敗北した後、連合国がその領土を分割し、現在のシリア、レバノン、イラク、ヨルダンといった国々を形成したことにある。
そこには巨大な石油利権が絡んでいた。
さらに西欧諸国、アメリカ、ロシアなどの思惑が複雑に絡み合い、加えてイスラムという宗教問題も影響している。
極東の日本から見れば、中東はまさに激動の地域である。
そして巨大な油田の存在によって、世界中が関与せざるを得ない地域となっている。
いつしか日本人は、現在の世界が平和だと信じ込んでしまっている。
しかし現実は、まだ「戦国時代」ともいえる状況なのである。
イランの歴史(1) ペルシャ文化の国の誕生
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イランの歴史(3) イラン・イスラム革命
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