半次郎  ★★★★

口コミ評価が高いので視聴。主演の榎本孝明の執念を感じた映画。女優陣の白石美帆さんもヒヤリとする冷たさやエゴイスティックな愛のありが伝わり好演。男臭い映画が好きな方にはお勧めである。

半次郎

半次郎

幕末から西南戦争まで激動の時代を生き急いだ男、その名は中村半次郎。
明治維新の立役者のひとり、薩摩藩士・中村半次郎こと桐野利秋の半生を映画化。半次郎にほれ込んだ主演の榎本孝明は本作制作実現のため、13年にわたって尽力したという。
薩摩藩士の子孫が協賛金援助、エキストラなどさまざまな形で製作を応援したという。

出演: 榎木孝明, AKIRA, 白石美帆, 津田寛治, 坂上忍

監督: 五十嵐匠 地雷を踏んだらサヨウナラ2000 長州ファイブ

Impression

その当時の薩摩の風俗がいい。男らしさ、武士らしさを過剰に意識する男たちも好ましいものである。

全編を通して感じたのは、薩摩剣法、示現流の特殊さである。

映画でも、この示現流の練習場面は一般のチャンバラ映画とはまったく違う。

示現流の『一の太刀を疑わず』は、半次郎の精神的バックボーンであり、ひたすら目的に向かって進む姿は、あの、悲鳴に似た猿叫とともに、何度も打ち込む示現流の練習そのものである。

主演、監督の榎本孝明さんは、この「半次郎」という男性像がほんとに好きなんだなーと感じた作品だ。

池波 正太郎さんは人斬り半次郎 幕末編 (新潮文庫)という作品を書いている。

示現流

示現流

示現流(じげんりゅう)とは、薩摩藩を中心に伝わった古流剣術。流祖は東郷重位。とある。

藩外の者へ伝えるのは厳しくされているので、基本的にはなんとか示現流はない。
薩摩藩士・薬丸兼陳(やくまる けんちん)が示現流を修めた後、家伝の野太刀の技を元に編み出した古流剣術、薬丸自顕流も有名だ。

野太刀自顕流

野太刀自顕流

色んな歴史を経て、現在のも示現流の技「一二の太刀」が採用され、警視庁で伝承されている。

時薩摩藩の支配下にあった琉球王国では、同じ琉球士族の衡氏久場知途から示現流を学んだといわれている。

示現流の特徴は、「蜻蛉の構え」から最速で切りつける。『一の太刀を疑わず』または『二の太刀要らず』であり、初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける『先手必勝、一撃必殺』の剣法である。

沖縄で発達した「空手」は、この示現流の考え方に影響を強く受けている。

棒きれを木刀として用い、蜻蛉(とんぼ)と呼ばれる構えから、気合と共に左右激しく斬撃する『立木打ち(たてぎうち)』など、実戦を主眼に置いた稽古をひたすら反復する事に特徴がある。

ひたすら実践であり、示現流では何時でも敵と対峙出来る様、平服姿でも稽古に参加しても良いとされている。また『剣を握れば礼を交わさず』と言われ、木刀を握っている者や稽古中の者に対しての欠礼も許されている。

打ち込む時に、気合いをかけるのだが「キィエーイ」という声は悲鳴のように聞こえ、猿叫と呼ばれる。

薩摩藩主、島津斉彬が薬丸自顕流の稽古を見た際に、「まるで気が狂った輩の剣術だ」と侮ったと云われている。

新撰組局長・近藤勇をして「薩摩者と勝負する時には初太刀を外せ」と言わしめたとされる。