大きな洞窟の近く。
気温は低く、雪が降ってきそうな空模様。
周りの山の頂は、雪ですでに白くなっている。
大柄で色白の男と、小柄で褐色の肌の女がいる。
「ねえ、お兄さん。無口だけど、頭がよさそうで雰囲気いいわねー」
「・・・」
「私、貴方みたいに体が大きくて、利口そうな人大好きよ」
「・・・」
「一緒んすんでいいでしょ」
「・・・」
なんとなく話が成立したらしく、二人は闇の中に消えていった。
小柄な三人の男たちが話している。
「この地に流れ着いたけど、あんな奴らがいるとは思わなかったな」
「そうよ。あいつらは体が大きい癖に利口そうだろう。俺たちの女共はみんなあいつ等のほうに行ってやがる」
「腹立つなー。何とかしないと女たちはあいつ等に全部取られてしまう」
「この前、妊娠した女が帰ってきたが、体が大きい子が出来るわよって喜んでいたぞ」
「よし、あいつらは体が大きいだけで、大人しいようだから、みんなで連携してやっつけちまおうぜ」
「そうだな、そしたらお前は見張りだ。俺たちはこの大きな斧でやっちまう」
「わかった。計画通りやればこっちが勝つさ。さあ行くぞ」
みんな女たちを取られた嫉妬に燃え狂っている。
小柄な男たちの集団は、大柄な男たちの住んでいる場所へすばやく移動していった。
手には手製の斧が握られている。
一撃で獣を倒せる、鋭利な斧だった。
小柄な有色の人々はホモサピエンスと呼ばれ、大柄の男たちはネアンデルタール人と呼ばれている。
そして、ネアンデルタール人は2万数千年前に絶滅した。
ネアンデルタール人は非常に頑丈で骨格筋も発達しており、肌は白く赤毛だといわれている。さらに脳容量は現生人類より大きくホモサピエンスより知能が高かった可能性がある。またネアンデルタール人とホモサピエンスは交配可能だった。ただ、現生人類と比べ、喉の奥が短いため、分節言語を発声する能力が低く、コミュニケーションがへたくそだった可能性がある。ネアンデルタール人が絶滅した理由は良くわかっていないが、ホモサピエンスがネアンデルタール人を滅ぼしたという説がある。最近の研究では、現生人類が受け継いだネアンデルタール人の遺伝情報の総和は、20%にはなると考えられている。