入れ歯の悲しみ

高齢者になって目が衰え、次に歯が悪くなる。そして、最後にはマラが衰えるという話がある。

入れ歯になることで見た目が良くなり、これは嬉しい点である。

また、歯のぐらつきに悩むこともなくなる。歯がぐらついていた頃には、アロンアルファが必需品であった。

世の中には入れ歯以外にもさまざまな器具を使って体を支えている人がいる。その人たちの事を考えれば、入れ歯など大したことではないと思う。

しかし、やはり入れ歯には悲しさが伴う。

まず、味があまりわからなくなる。これは慣れなのかもしれない。

また、硬いものがあまり食べられなくなる。まー、もともと硬いものが好きではなかったので、それはそれで良しとしている。

一番悲しいのは、1日のうちに1度だけ入れ歯を外して消毒することである。

その時の自分の顔を見れば、なんて間抜けな顔をしているのだろうとつくづく感じてしまう。かなり親しい人でも、彼女に見せることはできない。

これくらいであろう。

あと、入れ歯関連の話をすれば

「わたし、歯は丈夫なのよ」そういってニカッと笑う人がいる。

「へー すごいね」と返すのだが、うらやましいと思うのは丈夫な歯だけで、それ以外は全くうらやましいとは思わない。

入れ歯の悲しみは、実際に入れ歯になった人でないとわからないと思う。

これは、体にガタが来た証拠である。

死にゆく準備の一つなのかもしれない。