性被害まで「盛る」承認欲求おじさんと、AI美女の「中村りほ騒動」

技術が進歩したおかげで、世論工作の「サクラ」もずいぶんと安上がりになったものだ。わざわざお金を払って人間を雇う必要すらない。パソコンに向かってAIに指示を出すだけで、誰もが思わず同情したくなる「健気な女性」が一瞬で作れてしまう時代である。

 

立憲民主党栃木県連の男性党員が起こした「架空の女性・中村りほ騒動」は、そんな時代の空気を皮肉たっぷりに見せつけた出来事だった。彼が作ったキャラクターは、ある意味で実によくできていた。AIで生成した美人の顔に、「性暴力の被害に遭って妊娠・出産した」「子どもを育てながら地域のために頑張るお母さん」という、ネットで共感を集めやすい要素をこれでもかと盛り込んだのだ。そして党の名前を堂々と名乗り、まるで本当に実在する女性活動家であるかのように政治の投稿を繰り返していた。
 

立憲党員が架空女性の政治活動をXに投稿 AIで作成 党「民主主義ゆがめる」

 

だが、このお粗末な自作自演はあっけなく終わる。靖国神社を参拝したという投稿に「この画像はAIで作られたもので、そんな人物はいません」とコミュニティノートでバラされてしまったのだ。

 

なぜ、この騒動はここまで厳しく非難されたのか。ただの悪ふざけでは済まされない悪質さがあったからだ。

 

まず、他人の「本物の苦しみ」を自分の人気集めのエサにしたことだ。性被害や子育ての悩みは、現実の世界で多くの人が本当に苦しみ、声を上げている深刻な問題である。それを、ネットで「いいね」をもらうための便利な衣装として勝手に使ったのだから、当事者をバカにしていると怒られるのは当たり前だ。

 

次に、嘘の世論を作り出した罪である。実際には存在しない女性のフリをして「これが市民の声です」とアピールするのは、有権者を平気で騙す行為だ。ネットの情報を信じる人たちをカモにして、政治的な意見を押し付けようとしたわけで、健全な議論をぶち壊してしまった。

 

そして何より情けないのが、バレた後の「おじさんでは人気が出ないから、女性にした」という本人の言い訳だ。「女性や弱者のフリをすればチヤホヤされる」という安易で失礼な考え方が丸出しで、聞いていて恥ずかしくなる。

 

この事件の正体は、つまるところ「ネットでちやほやされたいおじさん」と「便利なAIツール」が最悪の形で合体した喜劇である。

 

生身の男性が政治の意見を呟いたところで、ネットでは誰も相手にしてくれない。そこで手に入れたのが画像生成AIという魔法の道具だった。「自分はAIを使いこなして、誰も見破れない完璧な美女を作った」「ネットの人たちを手のひらで転がしている」と、人形劇の黒幕にでもなった気分でいい気になっていたのだろう。

 

「自分は最新AIを使いこなす賢い人間だ」と思い込んでいた男は、実際にはAIを使いこなすどころか、自分の浅ましい承認欲求とモラルのなさをネット全体にさらけ出しただけだった。

 

いくらAIが進化してリアルな美女を描けるようになっても、それを使う人間の頭の中身や、ちっぽけなプライドまでは賢くしてくれない。実在しない美女のお面をかぶって踊っていた操り人形師の手元に残ったのは、集めたかった人気ではなく、ネット中に広まった冷たい笑いものとしての評判だけだったのだ。

AIのイメージ画像

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