下町ロケットの流儀
下町ロケットが高視聴率で話題になってる。
ご存知池井戸潤氏の小説が原作だ。
掘りが深すぎる阿部寛が主演。
演技派の俳優や落語家などひと癖ありそうな出演者ばかりで、キャスティングも楽しい。
ストーリーは、皆さんの方が良く知っていると思うが、たぶん中高年の人は(自分を含めて)、今こんなあらすじが、世間に受けていることに驚いていると思う。
半沢直樹の倍返しもそうだが、やられたらやり返せとか正義は必ず勝つなんていうのは、もう流行らない過去の遺物になっていたのかと思ってた。
下町ロケットは、まさに昭和のプロレスだ。
力道山や日本勢は、外人レスラーの卑怯な反則に耐えて、血だらけになっても頑張り続けている。
そして、我慢に我慢を重ねた末、力道山の空手チョップが炸裂、猪木の卍固め、馬場の16文キックが形勢を逆転させて、勝ってしまうのだった。
テレビを見ている僕たちは、テレビから離れても興奮からはさめていない。
そう、明日のジョーも星飛馬も一条直也も、皆耐えていた。
そして、最後には努力が報われていくのだ。
日本で一番売れている少年ジャンプの漫画の方針は、友情、努力、勝利だという。
これは日本人好みというか、世界中で愛されるストーリーなのだ。
しかし、よくよく振り返って見れば、このストーリーに鼓舞された僕たちは、高度成長期に向かってまっしぐらに走っていき、そして挫折を味わい、ついに還暦になった。
いま下町ロケットがもてはやされている理由はここに有る。
昭和30年前後の団塊の世代は、高度成長期、バブルの崩壊を体験し、人生の悲喜こもごもを味わってきた。そして還暦を迎えている。
今は娘、息子たちの世代である。
彼ら達のやり方に口を挟むつもりはない。
しかし、子供の頃に洗礼を受けた、男の美学はしっかり根を張っている。
伊集院静氏の「男の流儀」がベストセラーになっている。
テレビ番組の中で、近藤真彦との対談の中でこういっている。
「大人ということで説明をするとね。。大人にはやっていいこととやっていけないことがあ ると言うことを、決めるかどうかっていうことが大事で。 じゃぁ何を基準に決めるかと言 うとこれは2つしかなくて。 それは卑しいくないかと。つまり品格があるとか。 もう一つ は、それがそうしたときに後で自己嫌悪になったりしないかどうか。 だから品格と誇りと言うものを基準にものを判断してどうするかということを選択してい くと、だから安い事をしちゃダメだから。 」
品格というほどでもないが、卑しい事はしないというのは、その通りである。
いや、現役の時はいろんな事をしながら、家族を養い、会社に貢献してきたのだから、正しいと思うことを貫けなかったことも多かった。
そして後悔をしてきたのだ。
だから、現役を退いた時に初めて、子供たちに伝えなければならないことを思い出したのだ。
下町ロケットのドラマには、男の流儀が貫かれている。
たとえ、絵空事とわかっていても、それが一番大切だということもわかっているのだ。