幻の琴の海(ことのうみ)市
幻の琴の海(ことのうみ)市。この名前は、西彼杵郡の時津町・長与町・琴海町の合併で誕生予定だった市の名前である。
平成の大合併
平成の大合併とは、全国的には2005から06年にかけてピークを迎えた市町村合併の動きである。
国が号令をかけて、市町村の再編を行ったのは、明治、昭和の時代にもあったもので、人口の増減や地方自治体の費用の軽減を考えての、行政改革だ。
すべての県がやるという事ではなく、問題がある県が行っていて、全国的には1999年から2010年に649件の合併があり、市町村数は99年の3229から、10年には1727に減ったという。
長崎も行われ、突然雲仙市や西海市が出来たのに戸惑った人も多いだろう。
その当時の記事や記録を読めば、すんなり行った様子はなく、結構すったもんだして揉めている。
特に長与町、時津町、琴海町の合併話はこじれていき、長与町、時津町は合併をしなかった事は周知のことである。
合併できなかった原因は、消防、救急、火葬場、焼却場の問題であるが、ベットタウンとして伸びている長与町、商業地として開発目覚ましい時津町とすれば、合併するメリットがないという事で、都民ファーストならぬタウンファーストを貫いた結果である。
その結果、琴海町は消滅し長崎市になった。
西彼中部3町合併協議会会議録を読むと「鶏口となるも牛後となるなかれ」何ていう言葉も出ており、生々しいタウンファーストの議論の様子がわかる。
新聞記事には「平成の大合併」華やかなりし頃、長与・時津との合併協議に失敗。長与・時津の仲違いのとばっちりなどと書かれている。
まあ、各地域色んな事情があるので、時間が立たないと成功失敗はわからないと思うが、長崎市民とすれば、長与・時津の発展ぶりは大歓迎である。
歴史ある地名
私とすれば、合併すると町名が変わったり、郷などが消滅するので、過去の歴史がわからなくなってしまうのが残念だと思うのだ。
しかし、合併しなかったので長与・時津の町名はそのままである。
この2つの地域は古代より栄えており、面白いというか不思議な地域名が多い。
長与では嬉里郷(うれり)高田郷(こうだ)吉無田郷(よしむた)など。
時津では久留里郷(くるり)左底郷(さそこ)日並郷(ひなみ)元村郷(もとむら)等がある。
これらの郷名の由来を今後調べていきたいと思っている。
カナリーホール
写真は時津にあるカナリーホールの庭園である。9月1日の猛暑のさなか、撮影に行ったのだが、なかなか風情のある景色でスマホでパチリ。
よく見ると赤とんぼが飛んでいる。
猛暑の夏が続いていたのだが、9月になった途端トンボが舞う。
虫たちは、こんな暑い時期でも秋の訪れをちゃんと知っているのかと驚いた。
カナリーホールのスペルはCANARYである。となれば、鳥のカナリアの事だろう。
童謡の「かなりあ」は寂しさ漂う歌である。
「歌を忘れたカナリアは後ろの山に棄てましょか」から始まるのだが、最後に「歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す」で終わる。
カナリーホールは立派なピアノもある良いホールである。
童謡のとおり、長崎人が「忘れた歌を思い出す」ホールであって欲しいと思う。