3月頃から、スギ花粉アレルギーの人は発症し始める。

見ていて可哀相なくらいである。

スギ花粉症の人だが、全国民のおよそ4人に1人がスギ花粉症である。

これは、国民病とも言える数の多さだと思う。そして、スギ花粉症によるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下は社会問題でもある。

スギ花粉症による経済損失は、医療費や医薬品などの医療関連費用と仕事ができないなど労働損失による間接費の合計で年間2,860億円と試算されています※。井上こどもクリニック

 

さて、この花粉症、昔は話題に登っていなかった。

花粉症の報告は戦後の高度成長期頃からで、それまでは報告されていなかったという。

そうかも知れない。

青バナを垂らしている子供たちがいた時期である。

「鼻垂れ」と言う言葉がある。青二才や未熟者を指す言葉だが、最近は鼻を垂らしている子供など見かけたことがない。それだけ衛生意識と環境が整ってきたのだ。

アレルギー

この「アレルギー」だが、生活環境、食生活、人間の免疫などが変化したために起こってきたと言われる近代病だが、実はまだよくわかっていない。

学説として綺麗すぎる環境が感染症を減らしたかわりにアレルギーなどの病気を増やしたとか、乳幼児期の腸内細菌のバランスが変わってきたのではないかという研究もある。

医学の発達と衛生観念の向上により、人は感染症にかからなくなってきたが、その事で免疫のバランスが崩れる状況が出てきている。

キレイになる代わりに、アレルギーが出てくるようになる。

皮肉なものである。

日本に来る外国人は3年経つと花粉症になることが多いという。こうなると人体の免疫の乱れというより、日本国土の花粉の多さも問題になってくる。

大東亜戦争末期のアメリカ軍の空襲で、日本は焼け野原になった地域も多い。そのため、戦後成長が早く有用な樹木としてスギが選ばれ盛んに植林された。

その木が最近になって成長して花粉を飛ばす樹齢に達した事と、林業が衰退しスギ林が放置されたため間伐されずに残った木が花粉を多く飛散されることなどが影響しているのだ。

長崎県の森林面積は243千ヘクタールで県土の約6割を占め、ヒノキ・スギの民有人工林面積が89千ヘクタールに及んでいます。

長崎県では、戦後ヒノキ植栽を進めたことから、多くのヒノキ林が育っています。民有人工林の面積ではスギ林の2倍にも達しており、九州各県と比較しても珍しく、長崎県の森林の大きな特徴の一つです。 長崎県森林組合連合会より

長崎の山

という事は、長崎の花粉症は「檜(ヒノキ)」の花粉が一番だということになる。

詳しくいうと、社会の変化に対応しきれていない、日本の林業の姿が見えてくる。

杉や檜が沢山植林されたのは、戦後の国策でもあった。その為、広葉樹からなる天然林を伐採し、早く成長し経済的に価値の高い、杉、檜、松などをバンバン植林した。

しかし、この国策はあてが外れてしまった。

まず燃料革命が起きてくる。薪や炭に変わり、電気、ガス、石油が急速に使われるようになる。

こうなって来ると、ますます広葉樹の森(雑木林)の価値が下がり、杉、檜などの建築用の木の植林に置き換わってしまうようになる。

昭和30年代に材木の輸入自由化がスタートし、安い外国の木材が主流になってしまったのだ。

日本は森林国なのに世界一の木材輸入国である。そして世界の各国が輸出している丸太の約40%を日本が買っている。

しかも、現在は昭和に植えた木の伐採時期でもある。

なんとかしないと、日本の森や林は大変な事になってしまうのだ。

エコロジー

森林エコロジーとか言って、「森を守ろう」とか「緑を大切にしよう」という運動が盛んな日本である。

森を守る為、割り箸の使用しないという運動がある。そのかわりにプラスチックの箸を使おうと言っている。

そういえば「マイ箸」なんていうのもあった。バカバカしい。

優良な市民の人たちがやっている「自然を大切に」とか「緑を守ろう」という運動の趣旨は、わかるような気もするが、そこにエコロジーとかリサイクルなどと言った、正体不明の運動が絡まってくると、途端に怪しげになってくる。

長崎でおそらく一番大きな木は、西小島の「大徳寺の大クス」で木の周りが12.6mもある。諫早の「女夫木の大杉」は9.2mだ。

大徳寺の大クス

これだけの木が残っているということは、古代より、日本人が木に神性を感じていた証である。

そして、これはまさに「人間生活と自然との調和」、つまりエコロジー(生態学)なのである。

「花粉症」の増加は、この「人間生活と自然との調和」が崩れかけている警鐘なのかも知れない。

森や林にちゃんと手を入れ、杉や檜を切り出せば花粉症は減る。

単純な事である。

ただこれをしないのは、経済的な面だけなのだ。そして、これは行政がやるべき仕事なのである。


そういえば、東京の都知事の選挙の公約に「花粉症ゼロ」というのがあったが、口だけだった。公務員林業は百害あって一利なしなどという意見もある。

私達は自然の警告を見逃してはいけないのである。