時津 祐徳稲荷神社 庶民派の人気神社
〒851-2103 長崎県西彼杵郡時津町元村郷5
住宅地の中の小高い丘にある神社だ。
境内に入ると立派な鳥居があり、参道の石段を上がると、これまた立派な社殿が建っている。
手水舎横の由緒記を読むと、明治13年3月に佐賀県鹿島の祐徳稲荷神社の御分霊を歓請しこの地に建てられたとある。
なるほど新しいのだ。造りも佐賀の祐徳稲荷神社に似てないこともない。
祭神は倉稲魂神(うかのみたまのかみ)、猿田彦神(さるたひこのかみ)、天鈿女命(あめのうずめのみこと)だ。
倉稲魂神(うかのみたまのかみ)は宇迦之御魂神とも書き、稲・穀物・食物の神。猿田彦神、天鈿女命は夫婦で芸能の神様である。
特別な意味合いはなく、佐賀の祐徳稲荷神社と同じように、庶民のための神社である。
さらに拝殿の参道に、お百度祈願の石柱がある。
お百度祈願は百度参り(ひゃくどまいり)とも言い民間信仰である。これまた信者サービスだ。
境内の左隅に末廣稲荷大明神がある。
末廣というのは、ウェディングドレスの会社である。
稲荷神社では企業や個人が自分の名前を出して鳥居を建てることができる。もちろん神社にそれなりの金額を寄進するのだが、細かいことは神社との話し合いで決めるとある。
これもまた稲荷神社の庶民性の表れである。
その先には狐塚と呼ばれる小さなお狐さんを供養する石碑、次は三社殿があり天満社、稲荷社、恵比寿社の額が並んでいる。
その下には小さな石像が並んでいるのだが、その中の一つにワンちゃんが裃姿で鎮座しているのには、ニヤリとしてしまった。
さらにその奥の階段を上がると、命婦社があり、その奥には看板だけの金庫稲荷大明神と書かれた表札らしきもの、桃太郎神社もある。
佐賀の祐徳稲荷に行ったことがある人は知っていると思うが、神社の裏手には、細い山道があり、山の頂上までの参道には朱塗りの命婦社鳥居が沢山並んでいる。
規模はだいぶ小さいが、ここもまた同じように作ったのだろう。
稲荷神社は日本で一番多く祀られている神社である。
稲荷神とキツネは何の関係もないのだが、いつの間にか合体してしまった不思議な成り立ちで、江戸時代大流行をして、江戸の町は稲荷だらけになってしまった感があるという。
「伊勢屋、稲荷に、犬の糞」どこにでもあるという洒落である。
神社というと、古事記に出てくる天皇家ゆかりの神様が多く、それなりに格式がある。
しかし稲荷神社は庶民の神社で、特に商売繁盛を願う商人たちに大いに支持されてきた神社である。
武士たちは八幡神社、公家は天照系、そして商人や農民は稲荷神社ともいえる。
時津の地に明治になってから、この神社が建てられたとあるのは、時津の地が商業の町として発展していったからである。
今の時津には勢いがある。
これからも賑わう神社だろう。