七面山妙光寺 天女の霊地に登る

長崎市内の鳴滝にあるシーボルト記念館を目指す。その記念館から山を目指して進む。

“日本一狭い車道”として紹介された細道をバイクでひたすら登るとしっかりとした構えのお寺が登場する。

七面山妙高寺(しちめんさんみょうこうじ)という。

妙光寺

七面山とあるが、この山の名前ではなく、お寺の山号である。地図では烽火山が山の名前になっている。

このお寺は参詣者のためにちゃんと整備されていて、山奥にもかかわらず外部者用のきれいなトイレもある。

入り口にはヤギなどがいる小さな広場もあり、妙高寺が参拝者の為に細かな配慮をしていることがわかる。

奥の院への階段

この妙高寺から奥の院へ続く階段があり、奥の院までの山道の木々と紅葉が綺麗だ。

お祀りされているのが見慣れないものばかりで、なんだろうと思ったが、ここは日蓮宗の神仏混合の神社だと気づき納得する。

水子地蔵

日蓮宗

日蓮宗というと北大路欣也や萬屋錦之介の映画を思いつく。ガメラ映画などが流行っていた時代である。しかし内容は覚えていない。

日蓮

確か蒙古襲来の時海に向かって祈っている映像を微かに思い出す。後で調べると日蓮宗がスポンサーの映画だとわかった。

まあ稲佐付近は真言宗が多いので日蓮宗の事をあまり知らないだけである。

日蓮

日蓮は鎌倉時代の仏教のお坊さまである。61歳で亡くなった後皇室から「日蓮大菩薩」「立正大師」という諡号を送られたほどの名僧である。

日蓮は安房国(あわのくに、現在の千葉県)生まれで、16歳で出家しいろんなお寺で修行をしている。31歳で名を日蓮と改めて布教活動を開始している。

日蓮宗といえば、「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えながら太鼓を打ち鳴らす場面をよく見る。これは団扇太鼓といい、「法華の太鼓」(ほっけのたいこ)ともいう。

団扇太鼓

日蓮は法華経を唯一無二の教えとし、かなり過激に布教をしている。やはり一番の特徴は他の仏教宗派を徹底的に非難している事だろう。

有名なのは一般的に四箇格言(しかかくげん)といい「真言亡国、禅天魔、念仏無間、律国賊」というものである。

真言宗、禅宗、念仏(浄土系)、律宗はすべて駄目だというものである。

すごい!

仏教というと穏やかなイメージがあるが、仏教原理主義的な日蓮宗は違う。

天文法華の乱という比叡山延暦寺対日蓮宗の闘いがあり、結局総計約6万ほどの対日蓮の信徒が日蓮宗のお寺に焼き討ちをかけ、日蓮宗を追い出したという事件があった。

天文法華の乱

結局犠牲者は数千から1万人ほどいたと言われ、京都の町も大火となりその結果、京では日蓮宗が6年間ほど禁教となったのである。

なかなかの暴れん坊ぶりで、その後も様々な問題を起こしている。

調べてみると長崎の日蓮宗のお寺は17ほどあり稲佐地区にも一妙院というお寺があるらしい。

やはり私が知らないだけのようだ。

さて七面山妙光寺の話に戻るが、お寺では鬼子母神、大黒天が祀られているという。

私はお寺に行ってもほとんど本堂には入らないので知らないのである。

鬼子母神、大黒天ともに釈尊に行者守護を誓っている事から守護神として祀られているという。

鬼子母神

鬼子母神とは人間の子を捕えて食べていた夜叉だったが釈迦に諭され仏法の守護神となったという。

木造三面大黒天坐像

大黒天は現在のふくよかな顔をした神様ではなく、真っ黒けの三面六臂の憤怒の形相の軍神・戦闘神、富貴爵禄の神である。

ともに強面の神様だが、かなり神通力がありそうな神様である。

このあたりも日蓮宗ならではなのだろう。

奥の院の入り口には家紋が3つ描かれている。

不思議な紋のある入口

「蛇の目」日蓮宗を保護した加藤清正公の紋
「七曜」 妙見菩薩の紋
「違い竹」七面大明神の紋

七面大明神(しちめんだいみょうじん)とは、七面天女とも呼ばれ日蓮宗系において法華経を守護するとされる女神のことである。

要するに「蛇の目」で人の信仰、「七曜」で仏様の信仰、「違い竹」で神道の信仰を顕わしているのだ。

これは神仏混合という昔ながらの日本人の信仰を残しているからで、現代では珍しい。

しかし他でも時々見かけるが、日本人が仏教と神道を併せて信仰していた証拠で、日本独自のものである。

過激な日蓮宗だが、すべての宗教は民の救済のためにあり日蓮宗もそんな慈悲の心を持つ宗派であり、現在栄えているのはその心根を民衆は理解しているからだろう。

写真は11月25日に撮影したものである。これから秋が深まればなお一層山の木々は彩りを深めるだろう。

七面山から市内を眺めて

「しちめんさん」と呼ばれる七面天女。

七面を開き、七難を払ひ、七福を授け給ふ七不思議の神の住ませ給ふゆへに七面と名付け侍るとなり「身延鏡より」

なるほど

天女が住む山である。

くれぐれも粗相がないように。


引用参考
(仮称)山口広助のブログ
https://hirosuke.at.webry.info/201009/article_4.html

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