長崎港は鶴の港ではなかった!

異説か真実か!誰も触れなかった真の長崎の姿を検証する。NO,1
oldn

長崎港は鶴の港ではなかった!!

長崎港の事を鶴の港という。
長崎市のパンフレットにもかかれており、美しい港ということを表現したものだと思う。現在は次々と埋め立てが進み、昔の面影はどこにも見あたらず、どこがどう「鶴」なのか、知るすべはない。
長崎の古名は、深江(ふかえ)の浦と呼ばれ、文字どおり深い入り江であったらしい。中世の古文書にも記述がある。1571年(元亀2)ポルトガル船が来航し、交易をはじめるようなり、このあたりから長崎は賑やかとなってくる。豊臣秀吉、徳川家康と天領である長崎の主は変わっても、繁栄は続いていく。
検証「鶴の港」

nagasaki

パンフレットにある解説
「現在の県庁から市役所までの細い高台を鶴の首に例え、その両側に入り 込む海を両翼に例えている。」という説に従うと、浜の町や築町などがまだ埋め立てられていない時代のことである。コンピューターを使い大まかな地形を作ってみたが、この地形を鶴といいきるのは、かなり無理がないだろうか。

長崎に本格的な文化人が住み着くようになり、気取って「神応港」「周抱海」「崎陽」などと書いたり詠んだりするのは、江戸時代のことである。つまりもうすでに埋め立てが完了していたのである。

そんな時代の人々が、埋め立て以前の長崎を持ち出して、想像力だけで「細い高台を鶴の首に例え、その両側に入り込む海を両翼に例えて、鶴の港」と呼んだとは、考えられないのだ。

もう一つの説、「長崎の稲佐と五島町海岸に入り込んだ港、つまり現長崎港が鶴の胴体で、首は竹の久保付近まで、浦上川がくちばし」という説は、鶴の最大の特徴である翼がないのが、賛同を得られない原因だ。両方とも、こじつけ以外なに物でもない。

今まで、疑いもしなかった「鶴の港」がどこにもなかったのだ。

これまで学者の方が、「鶴」が長崎の港の形であるという解説を、通説として取り上げていた理由がよくわからない。鶴という鳥が美しい事の形容詞だということはよくわかる。だが、長崎港内に大昔から鶴がいなかったことは明白である。長崎の名の起こりかもしれない長い岬と「鶴の港」という呼び名が、細長いという1点だけで短絡的に結びついてしまったのだ。

他の長崎の異名を取り上げてみよう。「神応港」というのがある。長崎港内には神の島や高鉾など、神功皇后の伝説がある。その皇子が応神天皇だ。長崎港内には神話に由来する伝説が多い。それゆえ二人の名前の一字づつとり、神功・応神。つまり神応と呼んだのではないだろうかと推測される。

「周抱海」(しゅうほうかい)とは美しい山海が抱き合っているといった意味で、中国人が呼んでいたという。「崎陽」(きよう)というのは江戸時代の漢学者が、中国の地名らしく長崎を呼んだもので、今でいうならハウステンボスなどとカッコつけて横文字感覚で呼んだものである。

その当時の人たちは、学があり、センスがよかった。

そしてスケールがでかい。

貧弱な長崎の岬を「鶴」に見立てることなどしなかった。昔の人のスケールに戻ってもう一度見つめ直してみよう。美しい名前が近所にあった。それは大村湾のことである。琴湖(ことのうみ)と呼んでいる。現在でも琴海と呼ぶ。そのスケールで長崎地図を見直してみると、そこに鶴がいたのだ。

鶴とは、長崎半島を首に見立て、胴体が長崎市内、両翼が、飯森町、諫早付近と西彼杵郡の長崎市寄りの地。そう見ると、れっきとした「鶴」なのだ。その上、首に当たるところに「土井の首(どいのくび)」という地名がある。

地名解説で調べると、土井の首は昔は地形が低く「土囲が築かれている首地形の地」とかいてある。それじゃ毛井首はどう説明するんだろう。首地形なんて言葉は、辞書を引いても載っていない。

辞書には、「頸部」は、首の改まった言い方だが「半島の頸部」のように地形のくびれた部分も表わす、とある。要するに首に当たるから首と呼んだのだ。まさしく鶴の首の部分である。首があれば尻尾もあった。

「鶴の尾(つるのお)」っていう地名だ。同じように、鶴が昔飛来してきたからとか、鶴の群れのような丘があったとかいう説がある。鶴の群れのような丘とはどんな形の丘なんだろうか。意味不明である。鶴の尾に当たる部分だから「鶴の尾(つるのお)」と呼ばれたのだ。

「鶴の港」の本当の意味は「鶴の中の港」という事だったのである。

西の果ての長崎を、大海原に飛び立っていく鶴に見立てた昔の人の心は、何か大きな意味を鶴に託したんではないだろうか。いつかその謎を解いてみよう。

だけどこの「鶴の姿」はナスカの地上絵みたいに、上空からでないとわからない。それだけが不思議なのだ。

crane


イラスト&文 竹村倉二
参考資料 寛永長崎港図 引用、長崎辞典-長崎文献社 わが町の歴史散歩(1)熊弘人著 新波書房