それは一人のフェイスブックから始まった。
自称アーティストの彼は、色んなページにいいねを押して回り、友達を増やし悦に入っていた。
いつも誰かのコピーでもっともらしいことを書いているのだが、似たもの同士が集まりそれなりに賑わっていた。
自称アーティストはある時、自然裁判というタイトルで、
「1707年宝永大噴火の件、富士山に懲役500年、罰金500億円。」
という文章を投稿した。
何も考えていないフェィスブック友達から、いいねが殺到した。
もともと、他人の投稿など読んではいないのだ。
ただ、今回は文章が短いので、その文章の短さにいいねが付いたともいえる。
すぐコメントが付いた。
「685年浅間山の噴火の件、浅間山に懲役100年 執行猶予200年」
自分の自慢以外に書くことがない連中が、そのお題に乗ってきたのだ。
内容はウィキペディアのコピペだ。
「1995年阪神・淡路大震災の件、懲役2000年 罰金100兆円」
どんどんコメントが付いていく。
自称アーティストは思った以上に反応があったので、すぐコメントを付け足した。
「世界の災害に判決を!!」
そのコメントにまたコメント
「お前に懲役50年、もう書くな」
だんだん、炎上していく。
自称アーティストは炎上をあおり始めた。
ネットの炎上は普通の人間は嫌がるのだが、ネットしかはけ口のない奴らは、わざと炎上して世間の注目を浴びたがるのだ。
「ギリシャの財政破綻の件、アポロンの神に懲役10年、罪状監督不行き届き」
中にはまともな社会風刺も混じっていったが、世界中のありとあらゆる事象に勝手に判決を下してきた。
一番多かった被告人が、やはり神様達である。
「イエスキリストに懲役2000年、釈迦に懲役5000年等々」
「不敬だ、罰が当たるぞ」
そのフェイスブックの投稿は外人も混じり、1日10万件の大炎上が起こった。
その炎上は、世界中のネットに広がり続け収集がつかなくなってしまった。
ついに世界中のサーバーが落ちてしまった。
その次の日、サーバーは復旧した。
世界中のパソコンにスイッチが入った。
すべての立ち上がった最初の画面に、テキストが1行書かれていた。
「判決 人類、死刑。刑は火あぶり
罪状殺人罪。
判決理由、地球内の生物を自己的な利益で殺害した罪」
みんな唖然とした。
その文章は英語圏では英語で、中国では中国語で書かれていた。
その時テレビで臨時ニュースが入った。
「緊急ニュースです。本日地球に大量の隕石が落下しています。
今、何万もの隕石が大気圏で熱せられ、無数の火の玉となって各地に降ってきました」
自称アーティストは思った。
「神様を怒らせたのがまずかったな。これが本当の炎上というんだろうな」