「進化は種のため?」チンパンジーの子殺しから考える進化の仕組み

進化と聞くと、「種全体のために生き物が変化していく」と考えがちですよね。でも、それだと説明がつかない不思議な現象がたくさんあります。たとえば、動物の世界では「子殺し(インファンティサイド)」がよく見られます。

「え?自分の種を滅ぼしかねない行動なのに、なんでそんなことするの?」と思うかもしれません。でも、進化が「種のために起こる」のではなく、「個体や遺伝子のために起こる」と考えると、この疑問がスッキリ解決します。

チンパンジーの進化


チンパンジーの子殺し、なぜ起こる?

1970年代、日本の霊長類学者・伊谷純一郎(いたに じゅんいちろう)らがアフリカで野生のチンパンジーを観察していると、驚くべき光景を目撃しました。なんと、オスのチンパンジーが自分と血縁のない子どもを殺してしまったのです。

一見すると「種のために進化するなら、こんな行動は進化で消えるはず」と思いますよね? でも実は、この行動には進化的なメリットがあるのです。


進化は「個体や遺伝子のため」に起こる

進化論の視点で考えると、子殺しはオスにとって自分の遺伝子を残しやすくする戦略なのです。

どういうことか?

  • メスのチンパンジーは子どもを育てている間は、新たな子を産みにくい。

  • でも、子どもがいなくなると、再び妊娠しやすくなる。

  • つまり、新しいオスが他のオスの子を殺すと、メスが自分の子を産む確率が高くなる。

この行動は、「種全体の存続」ではなく、オス個体の遺伝子を次世代に伝えることに有利に働くのです。


「種のための進化」が間違っている理由

かつては「動物は種の存続のために行動する」と考えられていましたが、現代の進化論では「個体(や遺伝子)のために進化が起こる」とされています。その理由をいくつか見てみましょう。

① もし進化が「種のため」なら、子殺しは起こらないはず

子どもを殺してしまうと、種全体の数は減ってしまいますよね? でも実際には、ライオンやゴリラ、ネズミなど、多くの動物で子殺しが観察されています。つまり、種全体の存続よりも、個体が自分の遺伝子を残すことが優先されるのです。

② 競争があるのは「個体のための進化」だから

もし生き物が「種のため」に進化するなら、個体同士で争う理由がありません。でも、実際にはエサの奪い合いや縄張り争いがある。これは「自分が生き残り、遺伝子を残すための進化」だからこそ起こるのです。

③ 種のためなら、利他的な行動がもっと広がるはず?

たとえば、みんなが平等にエサを分け合う社会なら、種全体にとってはいいかもしれません。でも、実際にはそうならず、「自分や自分の血縁(親・兄弟)に有利な行動」が多く見られます。これは、「遺伝子レベルの進化」が起こっている証拠です。


まとめ:「進化=個体や遺伝子のために起こる」

動物の世界の不思議な行動も、「種のための進化」ではなく「個体や遺伝子のための進化」と考えると、納得できますよね。

🌱 進化は「種を存続させるために起こる」わけではない!

🦁 個体が「自分の遺伝子を次世代に残す」ために進化する!

チンパンジーの子殺しのような一見残酷に思える行動も、進化の視点から見ると「自然の合理的な戦略」なのかもしれません。

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