世界最古級の土器 泉福寺洞窟
泉福寺洞窟の写真素材 アートワークスフリーフォト
長崎県に世界最古級の土器が発掘された遺跡を実際の目で確認したくて、佐世保まで遠出した。
タブレットとスマホのナビで出かけたのだが、目的地に着いているのに、遺跡が見つからない。
国の史跡となっているのでそれなりの施設があるのだろうと思っていたのだが、やっと見つけたのは、小さな案内板である。
「うーん」
世界最古級の土器が発掘された遺跡だよ。
もう少し何とかならないのかな。
細い路地を50メートルほど入って行くと、ベンチのある小さな公園のような場所があった。
一応、施設らしきものはあるんだなと思ったが、説明板とベンチだけだった。
「再度、うーん」である。
遺跡入口の階段を上ると、途中から道がなくなった。
構わず歩いて行くと、あった。
写真で見るより小さい。
「なるほど」
こんなところに住んでいたんだな。
縄文の人達は豆粒文土器をつかって煮炊きしていたはずである。
佐世保にいた縄文人はどこからやってきたのか。
そして、どこへ行ったのだろうか。
この場所は独特の空気感がある。
何にもないけど、来て良かったと思う。
泉福寺洞窟(せんぷくじどうくつ)もしくは泉福寺洞窟遺跡(せんぷくじどうくついせき)は、佐世保市瀬戸越にある旧石器時代から弥生時代の岩陰遺跡である。国の史跡。
標高89メートルの砂岩の岩壁に4つの洞窟が開口しており、断続的に利用された住居跡で、泉福寺洞穴とも呼ばれる。洞窟の開口部が南向きでそばに湧き水があり、住居として適していた。
12層の土層があり、後期旧石器時代のナイフ形石器から平安時代の瓦器までの遺物が出土した。
東端の第3洞窟の前庭部で5メートルの地中から大量の細石器や隆起線文土器、ブランク、スクレイパー、叩き石などとともに約12,000-13,000年前といわれる世界最古級の土器である豆粒文土器(とうりゅうもんどき)が発見されている。
豆粒文土器
粘土を摂氏500度程度で焼いた土器で、文様は粘土の長楕円形の粒を口縁部に等間隔に貼り付けられていることからこの名称がついた。器形は胴部がやや膨らみ、丸底に近い平底である。
いずれにせよ日本人は12000年もの昔に土器をつくっていた。そればかりか土器片には煤(すす)が濃く残っていた。たき火の中に土器を立て、ドングリや獣肉などを煮ていた、と推測された。器が世界最古なのだから、器による煮炊きの調理も世界最古と言えるのではないだろうか。
なぜ九州の佐世保で世界最古級の土器が誕生したのだろう。それについて麻生教授は次のように語っている。
「氷河期が終わり、温暖化が進む中で、大陸から切り離された日本列島では狩猟が限界に達し、食物を植物に頼るようになる。あたかも温暖な九州では植生の変化によってドングリなどが豊富に採れだした。それを食べるには、あく抜きのための煮炊きが必要である。こうして世界の他の地域に先駆けて、豆粒文土器を誕生させたのだろう」(大学の講義録から)
長崎県佐世保市瀬戸越1丁目。いまでは住宅が増えてきているが、泉福寺洞穴の周囲は雑木林のまま保存されている。秋になるとドングリの類がたくさん実るという。
http://www.adnet.jp/nikkei/shiseki/contents/008.html