ゲノム解析でアフリカ起源説がゆらぎ始めている
この文は「交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史」デイヴィッド・ライク/著を読んでの感想である。
結構ボリュームのある本で、アマゾンの電子版を買って読んだ。
英語の翻訳文は苦手で、昔から頭に入りにくい。
今回の本もそうだったが、内容が興味深く何度も読み返した。
私の興味は、「人類の故郷は本当にアフリカだけなのか」ということだった。
現在はアフリカ起源説が主流で、180万年ほど前にユーラシアに拡散したホモ・エレクトス(原人)が各地で進化し、アフリカ、ヨーロッパ、アジアの異なる地域で並行的にサピエンスに進化したとする多地域進化説は影を潜めている。
ミトコンドリア・イブは特定できない
また、母系を辿り、すべてのサンプルがアフリカにいた1人の女性から分岐していることを明らかにしたとする「ミトコンドリア・イブ」もまた、アフリカ起源説である。
この話は、聖書のアダムのイブの話のようで、私も興奮したのだが、この「ミトコンドリア・イブ」は誤っているとデイヴィッド・ライクは書く。
現在の科学で遺伝子を調べると、「ミトコンドリア・イブ」は特定できない。
それはミトコンドリア・イブがいたとされる16万年前の更に約60万年にサピエンスは存在したからである。
まあ科学の進歩でよくある話だと思うが、「ミトコンドリア・イブ」という名称が衝撃的で、この言葉は今でも使われている。
だが、これは間違った結果だったのだ。
まずその事を知り納得をした。
また、北アフリカのモロッコでサピエンスの最古の化石が発見され、その年代が約33万~30万年前とわかり、アフリカ起源説は大きくゆらいで行く。
アフリカ起源説では、サピエンスはサハラ以南のアフリカのサバンナで誕生したとされる。
さらに、約5万年前に東アフリカから「出アフリカ」を果たしたとされていた。
だが30万年前にモロッコでサピエンスが暮らしていたとなると、アフリカ起源説は大きく揺らぐ。
ネアンデルタール人との関わり
さらに現代人のDNAを解析すると、日本人も含め東アジア系は、ネアンデルタール人に由来するゲノムがヨーロッパ系より高いことが判明した。
ネアンデルタール人とヨーロッパ人の関係はよく知られているが、東アジアのほうが関係が深かったのである。
この本には「全ゲノム解析が単純な説明を終わりにした」という章がある。
つまり、人類の誕生の歴史は、もっと複雑だったのだ。
新人類はユーラシア大陸でも誕生
この本で一番おもしろいのは、新人類はユーラシアでも誕生したという説である。
なぜ、新しい人類はアフリカでしか生まれないのか?
ユーラシア大陸にも180万年前から多くの人類が暮らしていたのだから、そこで進化したと考えることもできるのではないか、という問いがゲノム解析で正解に近づいていると感じる。
古代人のDNA解析にもとづいて、ユーラシアに進出したホモ・エレクトスから超旧人類が分岐し、さらにサピエンス、ネアンデルタール人、デニソワ人と分岐していったのではないかと書いている。
そのシナリオは、新人類はアフリカから一度出るのだが、ネアンデルタール人の勢力が強く、一度アフリカに戻る。
その後、5万年前に再びアフリカからでて、旧人たちを駆逐していくシナリオがあったと言う。
鍵となるデニソワ人
そして中東でネアンデルタール人と交雑したサピエンスの一部は東に向かい、北ユーラシアでデニソワ人と、南ユーラシアでアウストラロ・デニソワ人と遭遇して交雑した。
その後、彼らはベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸へ、海を越えてオーストラリア大陸へ、そして千島列島から北海道、本州へと渡り縄文人の先祖になったという。
アジアについては、深くは述べていないが、デニソワ人という旧人の存在が鍵としている。
彼は、人類の進化はヨーロッパだけが主役ではなく、東ユーラシアこそ、真の主役だったと言う。
人類史で最古の歴史を持つ縄文が、極東独特の閉ざされた世界ではなく、大きな意味を持つのだ。
さらに、新人類、旧人のもっと古い時代の「超旧人類」を「ゴースト」と呼び、進化に大きく関与しているとも書いている。
新しい可能性
アフリカ起源説以外の可能性を能弁に語る。
現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人の祖先集団は実はユーラシア大陸に住んでいて、彼らはアフリカから最初に拡散したホモ・エレクトスの子孫だったと。
そして、その後アフリカに一度戻る。そして再出発をする。
その彼らこそ、現生人類の子孫だった可能性があると。
なるほど、実に面白い。
不平等なゲノム
また、ゲノムに残る不平等の証の件も述べている。
これはチンギスハンという、たった一人のY遺伝子が多数の子孫を残し、東ユーラシアの暮らす何十億の人々に大きな影響を与えたということである。
これを「スタークラスター」と呼んでいる。
これは世界中にある。遺伝子の研究者たちは、この事が歴史に大きく影響を与えたと考えている。
日本で言えば天皇家だろう。天皇家の子孫である源氏と平家が日本の歴史に与えた影響は限りない。
この事も、歴史を考える上では重要だと再認識する。
人種と知能
ゲノム解析は、人種による知能の違いを科学的に証明している。
これはナチスのユダヤ人差別などを助長する考えとして、タブーになっている事なのだが、集団間には純然たる差異があることが現実に証明されている。
まさに人権派にしてみれば不都合な真実なのである。
しかし違う角度から見れば重要な視点である。
現在のコロナ禍についても、アジア人はヨーロッパに比べて被害が格段に低い。
それは、コロナウィルスがアーリア人(インド=ヨーロッパ語系諸族)に対して強毒化し大きな被害を与えた事実があるからだ。
人種間に違いが現実に存在するという事実に基づいた考えは、差別主義ではないはずだ。
それを人道的な観点から、人種間に格差はないという思想は再考すべきである。
事実は事実だからである。
あとがき
この本が示唆するものは大きいと思う。
門外漢の私が、ゲノム解析のすべてを理解するのは不可能だが、この本が言いたいことは、なんとなくわかった。
科学的進歩から出てきた新しい事実は、新しい解釈を容赦なく生んでいく。
それは正しいことだと思う。
アフリカから人類は進化した、ミトコンドリア・イブがいるなどの、単純なキャッチフレーズが、好むと好まざるとにかかわらず、覆されていく。
「事実は小説より奇なり」を再認識する。
又この文は
今、ホモ・サピエンスのアフリカ起源説など人類史の常識が次々と覆されている[橘玲の世界投資見聞録]
https://diamond.jp/articles/-/182802
の文章を多く引用させていただいた。
それは私の読解力のなさが原因である。
今回は気になる点だけをピックアップした形になってしまった。
さらに読み込んでいき、自分の言葉で語れるようになりたいと思う次第である。
“ゲノム解析でアフリカ起源説がゆらぎ始めている” に対して1件のコメントがあります。