万世一系 男系継承の謎

最近即位の問題で、男系女系が取りざたされている。

女系天皇、女性宮家の存在を認めよと、政治的な思惑が強い政党が盛んに意見を述べている。

それに対抗する人々の意見も多く、改めて天皇家の存在の意義を世間にひらしめた感がある。

もともと、共産党やリベラルと言い換えられている左派革新系の思想は、様々な権威を否定するところから始まっている。

つまり、天皇も宗教も否定している。中国共産党がその見本だ。

皇室・皇族の菊紋

 

まあそれは思想である。

日本を愛していれば、どんな思想も容認すべきである。しかし、天皇家の問題を「男女同権」といった短絡的な考えで、女系天皇を語るのは、とても聞き苦しい。

日本がなぜ男系天皇だけだったのかを考えてみたい。

 

外国人には天皇の存在がわからない

戦後、日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部GHQにより、天皇の問題が強く問題視されていたという記録が残っている。

マッカーサー

昭和天皇とマッカーサーの話は有名である。

マッカーサー自身が日本人と天皇の関係がわからなかったのだ。

本国のアメリカ人は、天皇を日本の最高責任者だと考え、処刑を望む声も多かったという。

その声に押され、マッカーサーは悩む。

処刑は簡単だが、日本を統治するという任務がそれで果せるかと考えたのだ。

日本人の勇猛さは熟知している。しかし敗戦の際、抵抗もせず反乱も起こさない日本人に不思議さを感じていた。

その理由に天皇の存在がある事に気づく。

天皇が出した勅令「武器を捨てて占領軍に協力せよ」が、日本人を動かしている事実を知った。

天皇と会見後、マッカーサーは「天皇に戦争責任を追及できる証拠は一切ない」と本国に答えたのだ。

マッカーサーが日本の天皇制を理解出来たかどうかは不明だが、日本を統治するには天皇制の存続が不可欠だという事だけは理解したのだろう。

 

何故男系にこだわったのか

西洋諸国の王国は、特別男系にこだわっていない。

北アイルランド・ロンドンデリーの紋章

中世ヨーロッパの王侯貴族の間では、女系継承は比較的よく行われた。

しかしそのせいで争いが絶えなかったのも事実である。

何故争いが起こるのかというと、女性君主と結婚する男性の規定がないので、誰でもいいという現実がある。

例えば敵対国の男性でも、君主と結婚できる。そしてその子供が王になる。

それは、国が乱れると必ず禍根として争いの理由になるのだ。

それ故に、世界の君主制では原則男系君主という事が定められている国も多い。

フランク王国(西フランクはフランス王国、東フランクは神聖ローマ帝国の母体となり、中フランクはイタリア王国を形成した)の古法であるサリカ法典は、女子が当主となることを認めていなかったが、実際は実行されなかった。

中華文明圏においては、男系継承が主流だった。しかしこれもまた抜け道がある。

つまり、余計な争いを避けるため男系継承を王国は取り入れるのだが、現実には抜け道も多く、原則という範囲にとどまってしまっている。

 

日本の天皇家

日本の天皇家は見事なほど、男系継承に統一されている。もちろんすべて化学的な鑑定がなされているわけではないが、古代の天皇の系譜も男系継承となっている。

世界の例から見ても、男系継承が争いを避ける方法だと熟知している証拠である。

神武天皇

また、古事記に記載されている話に注目すべき記事がのっている。

初代神武天皇の後継者の話だ。

神武天皇の東征は九州日向の国からスタートしたと記述があるが、日向の国で実はすでに結婚していて妻も子もある。

神武天皇は大和を制圧後、オオモノヌシ(出雲の大国主といわれている)の娘、イスケヨリヒメを皇后とした。

つまり重婚である。

日向の妻は、神武東征に参加した隼人族の女性(阿比良比売・アヒラヒメ)である。そしてその子供はタギシミミといい男子だった。

神武天皇が崩御されると、隼人族のタギシミミは義理の母であるイスケヨリヒメと結婚する。

その理由は自分が天皇となる為である。

これはある意味、正当である。神武天皇とタギシミミの弟、岐須美美命(キスミミノミコト)は親子であり、東征を成功させた戦友でもある。

話の流れから言っても、当たり前に天皇になろうとした雰囲気がある。

結局、タギシミミは神武天皇の次男カムヌナカワミミによって殺される。

そしてカムヌナカワミミは綏靖天皇となった。

後世の歴史学者から言わせるとタギシミミの反逆と書かれているが、隼人の世界では当たり前の事だったのではないだろうか。

強いものが王になる。

そんな世界が日向の世界だったのだ。

大和族はその弱肉強食の世界を断ち切ろうとしたのではないかと推理できる。

天皇の男系継承は、力と君主を分けることになる。

今風に言えば、軍隊と政治を分けて、統治をする方法を選んだともいえる。

軍隊がどんなに強くても天皇にはなれない。

政治家がどんなに暗躍しても天皇にはなれない。

天皇になれるのは純血の男子系統のみだからである。

じつによく出来た統治システムである。

まつりごとのトップは純血の天皇が不可侵の存在としてあり、その周りに軍隊と政治家がいる。それに加え宗教も天皇の元にあり、絶対不可侵の存在をさだめる事によって、三権分立のバランスを取る事になる。

これは日本独特の体制ではないだろうか。

強くない大和

大和は勝ち進んでいくが、それほど強い印象がない。

浪速国の長髄彦に最初負けたり、熊野の荒ぶる神に出会った時は高倉下(タカクラジ)の太刀によって災難を切り抜ける。
あとはヤタガラスの加勢を得たり、だまし討ちを行ったりしている。

どう見ても超人的な力を持っているとは言いがたい。

そんな神武は大和に本拠地を構えたのだ。そして、勇猛なスタッフたちの協力で上り詰めていく。

そんな大和の姿があぶりだされてくる。

そして男系天皇の謎がこの事で見えてくる。

 

強いものが上に立つという構図では、長期政権は続かないと大和族は考えたのだろう。

君主になる為の条件を考えた末に男系継承を守り抜いたと思える。

また、古代日本には様々な民族がいたと思われる。

中国大陸、朝鮮半島、東南アジア、北からアイヌやモンゴル。

いろんな地域からやって来て日本で暮らしていた。

やっと大和が出来上がり長期に平和を続ける為には、他の勢力の血筋を王権に迎えてはいけない。

女系継承を可能にすれば、大和は他の民族にのっとられてしまう事は目に見えているのだ。

 

現在の天皇制を見ればわかるが、天皇の条件は血統である。

それも純粋な男系の血統だ。

そしてその血統の元は神である。

神の祖先だから天皇なのである。それが唯一の条件にしたのである。

恐るべき知恵といってもいいだろう。

 

Y染色体

現代の科学によって男女は染色体の違いによって生まれる事が判明している。

Y染色体とX染色体が組み合わさって、人間の遺伝子は未来に引き継がれている。

YとXの組み合わせなら男で、XとXなら女になる。

しかしYとYはない。

染色体

X染色体を二つ持つ女子は遺伝子の修復も可能なのだが、YとXの男ではY染色体の修復は出来ない。

Y染色体は修復も出来ず、延々と次の世代に受け継がれていく。

それにより、古代の突然変異の歴史も蓄積されていく事になる。

 

古事記の記述を信じるなら、今生天皇のY染色体と神武天皇のY染色体は同じなのである。

科学的知識のない古代において、この事実を知っていたというのは驚嘆に値する。

Y染色体は遺伝子情報も少なく、性別を決める為だけにあると思われていたが、最近の科学では様々な事が明らかにされつつある。

しかし謎が多く解明までにはまだ時間がかかりそうだ。

 

時代錯誤か

生まれた時からその地位が決まってしまう世襲制、それも男系のみというのは、現代においてその有効性を論じるのは難しいかもしれない。

身分制度が排除されてきたのは歴史の流れである。

人類は平等とか人間の価値は同じであるといった考えが広まったからである。

科学的見地から言っても、男系女系に区別がない世襲制は、その世襲する根拠というものがない。

男系女系の区別がなければ、遺伝子は交わり続け、すべてが混血になってしまうからだ。

だから身分制度は根拠のない差別であるのは了解できる。

 

しかし、男系のみの世襲の場合、Y染色体は延々と受け継がれていく。

Y染色体のなかの遺伝子が特殊な能力を秘めているとすれば、その能力の可能性は何世代も引き継がれていく。

そこに純血を特別扱いする根拠が科学的にあるのだ。

万世一系の特殊さが持つ科学的根拠がいつか解明されるかもしれない。

私たちは現在の価値観だけを妄信してはいけない。

過去の歴史がおろかな迷信の積み重ねでないことを知るには、沢山の時間と科学的知恵が必要と思うからである。

 

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