女陰を損傷した女性たちの謎

古代史を読んでいて異様な思いにとらわれるのが、このほと(女陰)をついて死んだという表現があるからだ。

現代の私達からすれば、当然びっくりする。男にしてみれば、男根を切って死ぬという事になる。これはなにか深い意味があるに違いないと思った。

これに対してどんな解釈があるかを確認してみたい。

倭迹迹日百襲姫命

いちばん有名なのは倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)の話である。

倭迹迹日百襲姫命

百襲姫は大物主神の妻となったが、大物主神は夜にしかやって来ず昼に姿は見せなかった。

百襲姫が明朝に姿を見たいと願うと、翌朝大物主神は櫛笥の中に小蛇の姿で現れたが、百襲姫が驚き叫んだため大物主神は恥じて御諸山(三輪山)に登ってしまった。

百襲姫がこれを後悔して腰を落とした際、箸が陰部を突いたため百襲姫は死んでしまい大市に葬られた。

まあ実話でない事は確かで言い伝えである。大物主神が蛇に変身するといった件で神話とわかる。

百襲姫の存在も事実ではないだろう。だがこの話は意味深である。いろんな解釈が湧いてくる重大な逸話である。

機織り女

次は高天原の話だ。

天照大御神が、神に献上する御衣を機織り女たちに織らせていたときに、スサノオが棟に穴をあけて馬を逆剥ぎにして落とし入れたところ、機織り女はこれを見て驚き、梭(ひ)で女陰を突いて死んでしまった。

梭(ひ)とは機(はた)織りで、よこ糸を巻いた管を入れて、たて糸の中をくぐらせる、小さい舟形のものである。

この機織り女が神様かどうかは書かれていないが、高天原に住んでいて作業をしているので、神様に近い人間たちと解釈してもいいだろう。

さらにもうひとり重要な人物がいる。

イザナミである。

ウィキペディアには日本神話の女神。伊弉諾神(いざなぎ)の妹であり妻と書いている。

いろんな神様を生むんだが、火の神 迦具土神(カグツチ)を産んだために陰部に火傷を負って病に臥せのちに亡くなるとある。

イザナミもホトを損傷し、その後の死の国黄泉での話は続くが、とりあえず死んでいる。


イザナミの話を別にすると、百襲姫の場合、一番多いのは、強姦されて死んだという説である。

しかし大物主神の妻なので強姦は適当ではない。これには賛同しかねるが、他の説が出てこない限り定説とされているのはしょうがない。

いろいろ思い考えていたら、一つ重大なことに気づいた。「神様って死なないんではないのか」という事である。

神様の死

一神教の場合、神様は死なない。それは、神様が一人しかいないからである。

日本のような多神教の場合、隠れたりいなくなったりする。これを死というのかは考え方によるが、一般的には死ぬ場合もあるということである。なので、古事記にも死の概念が存在している。

それならばどうされたら死ぬのかという事が出てくる。

その答えが「ホト」を突くと言うことだと推測できる。

つまり、女神の急所は「ホト」なのだ。

そんな事は当たり前だと言う話になるのだが、わざわざホトを刺す事を書いているということは、逆に言えば、ホト以外では死なないという事になる。

古事記ではそれ以降の女性の登場人物も死ななければならない場合は、ホトに傷を負うという設定にしてしまったと解釈したほうが自然だと思う。

しかし人間の女性は女陰でなくても、か弱い存在なので女陰以外でも死んでしまう。

わざわざホトをついて死んだとあるのは、やはり普通の人間ではないという事だ。

神様と付き合った女性だけがホトを突かれたら死んだというのが事実である。いや古事記の中でのお約束事柄なのである。


様々な説の盲点

ホトをついて死んだのが百襲姫命だけだったら、いろんな憶測が出来るのだが、高天原の機織り女の話があるので推理が進まない。

機織り女の死に関して、それほど深い意味を見いだせられないからだ。

深読みをすれば、機織りという産業をスサノウが滅ぼしたとも取れるのだが、そんな事はなかったからである。

しかし実際に古事記に書かれているので無視することは出来ない。

そこが重要なのだ。

ホトをつくという異様な描写が故に百襲姫命の件は様々な説が生まれている。

しかし本当はただ死亡したという描写に過ぎなかったのではないかという結論しか出てこないのだ。

まとめてみる。

古事記の話では、最初に伊弉諾(いざなぎ)神が、火の神 迦具土神(カグツチ)を産んだために陰部に火傷を負って病に臥せのちに亡くなる。

つまり神様でも女陰を損傷するとこの世を去らなければならないほどの損傷を受けるという話である。

そして高天原の機織り女はスサノウの乱暴さに驚いて女陰をついてしまう。そしてその女性は死ぬ。

百襲姫も後悔して腰を落とした際、箸が陰部を突いたため百襲姫は死んでしまう。

共に不慮の事故なのだ。

しいて言えば、伊弉諾神(いざなぎ)クラスの神様を除けば、神様と関係のある女性の場合、女陰を損傷することで完全に死んでしまうという事なのだ。

それほど、女性の女陰は女性の根源的な急所だという事を古事記は言いたかったのだと思う。

女性は女陰を損傷すれば、子孫を作れないし完全な死を迎えてしまうという、当たり前すぎる事実を確認しているだけだと考えたい。

しかしそれは、それだけ重要な事だと古事記は示唆しているに違いないのだ。

古事記の話に戻る。

ご存知の通り、神産み国産みはかなりストレートな描写で比喩以上のエロティックな臨場感がある。

古事記の最初にでてくる神産みの場合、柱の周りをグルグル回る。これは男根を愛撫する事で射精させたということだし、国産みは鉾を回してその滴りで国が出来るという作業は、女性の女陰の中に男根を挿入し、射精して国が生まれるといった内容である。

そんな話の流れで、伊弉諾神(いざなぎ)は女陰を火の神を生むことで損傷してしまい黄泉の国へ行く。

最高神の女神でも女陰を損傷するということが、致命傷になるという衝撃の神の弱点を暴露した文章が最初にある。

いざなみといざなぎ

その事がスタートラインで、女性が死ぬ場合、女陰の損傷というのが重大事というのを古事記は書いているだけだったのだ。

ほと(女陰)を損傷した女性がいるというだけでいろいろ想像をめぐらしたのだが、この3つの事件に関連性はない。

特に高天原の機織り女の死は事故だという以外にも何も出てこないからである。

この一点に関連性が見いだせなければ、謎めいた憶測は無理である。

逆に3つの事件に共通しているのは女性と死の事実である。

そして女陰が持つ生命力を本当に断つには女陰を傷つけることだという思想性である。

思考の迷路の罠

古代史で遊んでいると、いろいろ深読みするのが楽しい。しかし深読みしすぎると迷路に入ったり、独自の説を振りかざしてしまう結果になってしまう。

今回の女陰事件もだいぶ考えたが、女性急所説までしかたどり着けなかった。

残念でもあるが、女性急所説が真実のようだと思う。

これも又古代史の楽しみ方なのかもしれない。

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