長崎「のんのこ」ってアイヌ語か!?

長崎県諫早市の「のんのこまつり」が無事終了した。撮影とホームページ制作を請け負っているのだが、炎天下丸2日の撮影は4人のスタッフたちも流石に疲れたようだった。

のんのこ祭り


長崎市の人たちはこの「のんのこ祭り」を知らない人が多いのだが、年配の方なら「皿踊り」は知ってる人も多いと思う。

長崎県は諫早、大村、平戸、島原、五島といろんな市があるが、地域に住む人達は自分の地域の祭りしか知らないことが多い。しょうがないのだけど、その地域その地域で歴史や由来がある。やはりそれなりに重要なのだ。

長崎では「おくんち」という一大イベントが10月にあり、長崎のテレビや雑誌、新聞は「おくんち」一色になってしまう。

しょうがないのだが、少しは他の地域の祭りもマスコミは、それなりに取り上げるべきではないのかなと思う。

さてこの「のんのこ」、いろんなページに長崎県諫早市の方言で「かわいい」という意味との事が書いている。

しかし、なぜ「のんのこ」が可愛い意味なのかは載っていない。実に不思議な現象なのだ。そこで、調べる事とする。


「のんのこ」について調べると

佐賀の麦焼酎。酒名は、民謡「のんのこ節」に由来し、この地方の方言で「かわいい子」の意。
デジタル大辞泉プラスの解説

とある。

「のんのこ」は諫早の方言ではなくて佐賀の方言だと言う。

他の解説では

長崎県諫早(いさはや)市から佐賀県南部の民謡。両手に二枚ずつ挟んだ小皿を鳴らしながら唄い踊られる酒盛り唄。

文化年間(1804~1818)に江戸で流行したはやり唄「のんのこさいさい」が、四つ竹を用いる遊芸人によって伝えられたものと考えられる。大辞林 第三版の解説

ふーん 初耳の四つ竹(よつだけ)についても調べてみる。

日本の打楽器。カスタネットに類似する。4個の竹片を片手に2片ずつ持ち,それを手の中で打合せて音を出す。民謡では口説風の歌や,万作踊などの伴奏に用いるほか,沖縄では芸術的な舞踊の伴奏にも盛んに用いられる。歌舞伎の陰囃子では世話場の幕あけ,出入りなどに用いる。

四つ竹

なるほど

芸人の四つ竹(よつだけ)が、諫早、佐賀では皿になったというわけである。

佐賀には唐津・伊万里・有田といった古くから陶磁器の産地として有名な場所がある。そういった事で、焼き物の皿に変わっていったのだろう。

のんのこ皿踊り

江戸ではやったという「のんのこさいさい」は諫早の「のんのこさいさい節」が元歌だという話もある。

幕末の諫早地方民謡〈のんのこさいさい節〉を元唄とする後世派生の流行唄。 各地に派生唄が見られ、かわら版や読売りを通して九州はじめ江戸まで広範囲に作られ流行していたようだ。

のんのこさいさい節 | 歌謡遺産 歌のギャラリー
https://ameblo.jp/ogimatsu5963/entry-12171152931.html


やっぱり諫早地方の「のんのこさいさい節」が元歌だったというのが正解のようである。

長崎に「のんのこ」が「可愛い」という意味の方言だと書いているが、地元の人間でも、「のんのこ」という言葉は使ったことがない。

さらに佐賀の方言辞典にもない。

いったい「のんのこ」っていうのはどこの言葉なんだろうか。


さいさい

のんのこさいさい節の「さいさい」について単なる囃子詞で意味はないという。「さいさい」の文字を使った言葉に「お茶の子さいさい」がある。

これには説明がある。

ここでの「お茶の子」は「茶の子腹」のそれで、朝飯前の茶漬けを指します。
「さいさい」は「太玄経(前漢末の『易経』に似た書物。)」の註釈に「さいさい 食疾貌」とあり、「さいさい 早口に食うさま」を表わすといいます。
参照:「大辭典」平凡社
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%AA%E7%8E%84%E7%B5%8C-91060

この「口偏+最」の漢字には「(1)食らう、…(4)一口に食い尽くす」意味があります。

参照:「新潮日本語漢字辞典」

ですから、今風にいえば、朝飯前の茶の子漬けを嘖嘖(さくさく)・さらさらと流し込むほど容易な意味に当たりそうです。

ネットでは、「のんのこさいさい節」のさいさいが「お茶の子さいさい」になったという説明が多い。

どちらが先だったかというのは水掛け論だが、さいさいという漢字には色んな意味がある。

再再、歳歳、細細、済済、騒騒 すべてがさいさいと読む。

「のんのこ」がどんな意味かで、後ろの囃子詞の漢字が決まってくるんだろうと推測できるのだが、現時点ではそこまで推理できないだろう。

聞いたことがない「のんのこ」という方言

のんのこが可愛いという方言というのだが、当の長崎人や諫早人は聞いたことや言った事がないのだ。

実に不思議である。

言ったり聞いたりしていない言葉があなた達の方言ですよと言われているからだ。

念の為、ネットで調べても方言の中に「のんのこ」という言葉は発見できなかった。

長崎の五島という島では、「可愛い」と言うのに「みじょか」などと言う。

長崎市内では「かわいか」ぐらいしか思いつかない。(私は昭和30年生まれの生粋の長崎人である)

それなら、この謎の言葉「のんのこ」はどこから言われ始めたのだろうか。


推理すれば「のんのこ」が「のんの子」と解釈されたから可愛いという意味が後付されたような気がする。

それでは「のんの」とはなんだろうか。

宇和島(愛媛県)の方言に「のんのさん」と言うのがある。これは神様という意味で観音様から来ている。

大阪弁にも「のんの」があり、これは帰るという意味である。共に幼児語から来ていると思われる。

さらに香川県にも「のんのさん」という言い方があり、「のんきなおじさん」という意味合いがあるという。

これらから推測すると、のんびりとした娘と観音様の娘という意味がとれる。

どちらともいい難いが、諫早は長崎県である。長崎県にはぶらぶら節というのがある。

このぶらぶら節は、

長崎名物はた揚げ盆祭り 秋はお諏訪のシャギリで氏子がぶーらぶら ぶらりぶらりというたもんだいちゅ

という歌詞であり、かなり呑気な雰囲気を持っている。

長崎の隣の諫早の「のんのこ節」もこの「ぶらぶら節」の雰囲気を持っているのではないかと思う。

これらのことを考えれば、「のんのこ」とは「呑気な娘」がベースになっているんではないかと推理できる。さらに「さいさい」も万歳の歳のように、それはめでたいなどの意味を持つ囃子言葉ともとれるのだ。


様々な歌詞

「のんのこさいさい節」は各地で替え歌がたくさん作られているが、その歌詞は

「丸い玉子も切りやうぢや四角なる、のんのこさい」

「つとめチヨイする身は、田舎の月よ、ノンノコサイサイ、何処へまことをうつすやら」

などといった、呑気な内容や都々逸のような洒落た文句が並んでいる。

諫早ののんのこ節も、昭和に入って作られた歌と踊りで、歌詞は参勤交代時のエピソードが元になっている。

諫早のんのこ節の歴史
「諫早のんのこ節」の歴史は、江戸時代の参勤交代での出来事が始まりだと言われています。

諫早の藩主が江戸参勤交代で箱根の関所を通過中に関役人は不覚にも居眠りをしていました。関所を通るときは大鳥毛・槍などの道具類を45度以上前方へ傾けるのが決まりでしたが、役人の声がかからないので、道具を傾けずに通過していました。
ところがこれに気付いた役人が「天下の関所を立て道具のまま通るとは何事ぞ。早々に引き返せ」と怒鳴りましたが、行列の最後尾にいた足軽頭の小柳与右衛門が肩衣を脱ぎ、関所の玄関にわらじのまま片足を踏んで「なぜ通らぬ前にとがめない。行列を引き返せというなら職務怠慢のその者らがまず腹を召されよ。さらば行列を戻そう」と啖呵を切ると、役人は言葉につまり行列は関所を通過しました。

関所から数キロ離れた所で一行は道端の芝生に腰をおろし「立て道具のまま関所を越えたのは吾が藩のみぞ」と言って酒盃をあげたそうです。
その時に歌心ある藩士が即興で”芝になりたや箱根の芝に、諸国大名の敷芝に”と歌ったのが「のんのこ節」の元唄になったと伝えられています。
諫早市ホームページより
http://www.city.isahaya.nagasaki.jp/post03/1521.html


上記の内容を考えれば、失敗から転じた自慢話で、可愛い子の話ではない。

となれば、「はは、呑気だねー」ののんき節に似た雰囲気があるといって間違いがないだろう。


まあ、世間では「のんのこ」は「可愛い子」という長崎、佐賀の方言というのが溢れているので、たった一人で反論するのは気がひけるのだが、文献がなく、当の長崎人、諫早人が「のんのこ」という言葉を使ったことがないというのだから、反論しても良いような気がする。

世間や定説と言われていることに疑問を持つことは悪いことではないが、変わり者扱いされることだけが癪に障るのだ。

のんのこの出典がない

さて、「のんのこ」が「可愛い子」であるという話がどこから起こったのであろうか。

ひとつ私に説が有る。

それは、「ノンノ」というのがアイヌ語で「花」という意味が有るということだ。

アイヌ語の「ノンノ」が諫早に残っているものかと笑う人もいると思うが、長崎県の佐世保は、アイヌ語だという説が有る。

アイヌ語で「サ」は広いという意味、「セブ」は谷という意味で「サセブ」から「サセボ」に転訛したもの。
「佐世保」の地名の由来
https://folklore2017.com/timei900/0071.htm


さらに

成人T細胞白血病
日本国内の分布に目を転じると、南九州や沖縄、アイヌに特に高頻度で見られ、四国南部、紀伊半島の南部、東北地方の太平洋側、隠岐、五島列島などの僻地や離島に多いことが判明している。ウィキペディア

つまり、長崎にもアイヌの言葉が残っていても、それほど不思議ではないのである。

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上記の文は自説である。よろしければどうぞ

雑誌「ノンノ」

しかし、アイヌ語の「ノンノ」が「のんのこ節」の語源になったとは思われない。

となれば、残るは唯一つ、昭和46年に集英社が出した雑誌「ノンノ」が原因だと推測される。

ノンノ 1974年10月5日号 NO.10

「ノンノ」のタイトルはアイヌ語のノンノ(花)から来ているのだが、雑誌の内容は女性ファッション誌である。

当時、アンアンという女性誌が発売され、それに対抗して出版された雑誌である。この雑誌はとても有名で「アンノン族」という言葉を生み出したくらいである。

どう調べても「のんのこ節」が可愛い女性を歌った歌ではなく、「呑気な」唄である以上、可愛い子という説明には納得行かない。

「のんのこ」が可愛い子だというのは、後年女性ファッション誌の名称「ノンノ」と摺り合せて付け加えられた意味だと考えたほうが自然であると思う。

作られた定説

現時点では、民謡の「のんのこ」には可愛い子という意味がない。

もし、どうしても「のんのこ」は可愛い子という意味の長崎、佐賀の方言だといいはる人がいたなら、その証拠を出してほしい。

もし百歩譲って、長崎の方言だとしたら、アイヌ語の「ノンノ(花)」から来ていると考えるしかないだろう。

ネットの定説はコピペから生まれることが多い。

諫早市のホームページに載っているので、何も考えずに飲み込んでしまうだろう。しかし、諫早市のホームページの文章もやはりどこかのコピペだと思う。

こんな現象が多く世間に存在するような気がする。

「のんのこ」の説明の「可愛い子」に関しての資料が出てくれば、もちろん自説は喜んで引っ込める。

しかし何もでてこないなら、私は自説を信じる。


あん人はぎゃーなかことばっかいゆーとっばい

そいでんよか

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